E809 – フランス語圏電子図書館の現在

カレントアウェアネス-E

No.131 2008.07.09

 

 E809

フランス語圏電子図書館の現在

 

 フランス語圏電子図書館(Bibliotheque numerique francophone)とは,フランス語圏の国立図書館に保存されている様々なコレクションを電子化しインターネット上に公開することを目標とするプロジェクトである。このプロジェクトは,各国の公的機関がインターネット上の各国の文化を守り,文化的多様性を維持していく必要があると主張する,ジャン・ノエル・ジャンヌネーフランス国立図書館(BnF)前館長の影響を受けていると言われる。

 フランス語圏電子図書館のプロジェクトは2006年に始まった。2006年4月には,BnFを中心として,ベルギー,カナダ,カナダ・ケベック州,ルクセンブルク,スイスの各国(地域)の国立図書館とエジプトのアレクサンドリア図書館が「国立電子図書館フランス語圏ネットワーク(RFBNN)」を結成し,プロジェクトに取り組むこととなった。RFBNNは,プロジェクトを行うにあたり,下記の5つの原則を立てた。

  • どのような検索エンジンからも,電子化済みコレクションにアクセスできるようにすること
  • (権利の問題のない文章について)無償のアクセスを保証すること
  • 電子ファイルをパブリックドメインで維持し,長期保存を保証すること
  • 各種コレクションに多言語でアクセスできるようにすること
  • インターネット上に公開される文書の完全性と真正性を国立図書館が認証すること

 2007年9月には,ブリュッセルでフランス語圏国際組織(OIF)により開催された「電子時代のフランス語圏図書館」会議に,OIFメンバーの15か国の国立図書館代表が参加した。そこでRFBNNを「南」のフランス語圏諸国の図書館へ拡充する条件が整備された。

 そして2008年5月16日,RFBNNの枠組みのもと,またOIFの支援を得て,フランス語圏17か国(地域)の図書館代表が,BnFに集まった。17カ国(地域)とは,2006年当時のRFBNNのメンバー国(地域)に加え,ブルキナファソ,カンボジア,ハイチ,マダガスカル,マリ,モロッコ,モーリシャス,セネガル,チュニジア,ベトナムである。会議では,2008年4月に南のフランス語圏諸国の図書館に対して行われた「電子化プロジェクトを理解し指揮する」という養成プログラムについての報告が行われ,各国で電子化についての意識が高まっていることに賛辞が述べ合われた。

 さらにケベック州立図書館・文書館によって開発されている,フランス語圏電子図書館のポータルサイトのプロトタイプの進捗についても総括が行われた。このポータルを通じて,フランス語圏12か国で電子化された新聞,雑誌などの様々な文書を検索することができるようになる予定である。プロトタイプは,2008年8月12日,ケベックで開催されるIFLA年次大会の場で公開される。なお,ポータルの本格稼動は2009年の予定である。

Ref:
Jeanneney, Jean Noel. Googleとの闘い. 佐々木勉訳. 岩波書店, 2007, 166p.
http://www.bnf.fr/pages/presse/communiques/bibli_num_fr.pdf
http://www.bnf.fr/pages/presse/dossiers/conf_racine_13nov07.pdf
http://www.bnf.fr/pages/zNavigat/frame/infopro.htm
http://www.bnf.fr/pages/presse/communiques/francophonie.pdf
http://www.republique-des-lettres.fr/1170-bibliotheque-numerique-francophone.php
CA1193
CA1564
E416