カレントアウェアネス-E
No.96 2006.12.06
E577
視覚障害者向けサービスが一歩前進:著作権法改正案(日本)
政府はこのほど,著作権法改正案(以下,改正案)をまとめ,2006年11月2日,第165回国会に提出した。2006年12月1日の衆議院文部科学委員会で可決され,今後本会議での審議が進められる。
特に図書館に関わりが深い改正点として,視覚障害者向け録音図書に関する規定の見直しが盛り込まれている。2006年現在の著作権法(以下,現行法)では,視覚障害者向けの録音図書は貸出目的にのみ作成が認められている(第37条3項)が,改正案ではこれに加え,公衆自動送信(いわゆるインターネットによる送信)を行うために録音図書を作成し(改正案第37条3項),出所を明示した上で(改正案第48条1項2号),インターネットで配信することが可能となる(改正案第37条3項)。このほか著作権による保護の例外として,現行法の裁判手続による複製(第42条)に加え,特許審査手続や薬事行政における文献の複製を認める規定が,新たに盛り込まれた(改正案第42条2項1号及び2号)。以上の改正点はいずれも,2005年の文化審議会著作権分科会法制問題小委員会で検討され,2006年1月に公表された「文化審議会著作権分科会報告書」においては,著作権の制限が「適当」,もしくは「必要とする意見が多い」とされている(CA1604 参照)。
一方,著作者に対する権利制限の拡大とあわせて,権利侵害に対する罰則も強化されている。著作権,出版権または著作権隣接の侵害に対する罰則について,現行法では最高刑が5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金と規定されている(第119条2号)が,改正案では最高10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金に改められる(改正案第119条1項)。
改正案ではこのほかにも,地上波テレビのデジタル化に備えた,IPマルチキャスト技術による地上波放送の同時再送信関連規定の整備(改正案第2条1項7号の2など)や,サーバー等の保守・修理のための一時的バックアップに関する規定(改正案第47条の3),海賊版の輸出に対する取締りの強化(改正案第113条1項2号)も盛り込まれている。なお,著作権の存続期間延長といった衆目を集める変更点は盛り込まれていない。
Ref:
CA1604
http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/165.htm
http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/165/06111704/002.pdf
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/gian/16503165012.htm
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/toushin/06012705.htm