E578 – 公共図書館の新館建設に見る環境への取り組み(米国)

カレントアウェアネス-E

No.96 2006.12.06

 

 E578

公共図書館の新館建設に見る環境への取り組み(米国)

 

 米国では,毎年多くの公共図書館が開館あるいはリニューアルしている。American Libraries誌の新館特集には,“libraries = cultural icons”というコピーが踊り,文化の象徴として,蔵書のみならず建物自体によっても地域の文化を守るものであるとの意識がうかがえる。

 12月にオープンしたモンタナ州のボーズマン(Bozeman)公共図書館では,環境が1つのテーマになっている。約5,000平方メートルの図書館には,多くの環境負荷軽減の工夫が行われている。屋根には全面に渡ってソーラーパネルが使われており,水を使わないトイレなども導入されている。また,駐車場の建物入り口に近いエリアをハイブリッドカー優先スペースとして,利用者をも巻き込んだ環境負荷軽減の取り組みを行おうとしている。

 これらの取り組みは,米国グリーンビル協議会(USGBC)が行っている評価制度LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)のシルバー保証の取得を目指すものである。LEEDは,ビル全体として環境に対するマイナス要因を極小化したグリーンビルディングの普及を図るための評価制度であり,代替エネルギーの導入,建築材料の有効利用,室内環境の品質改善など,様々な要素を総合的に評価する制度である。ボーズマン公共図書館では,このLEEDのシルバー保証を受けることが,50万ドル(約5,770万円)の寄付の必要条件となっており,デザインの方向性を決める要素の1つになっている。

 一方,LEEDの保証を断念した図書館もある。3月にオープンしたユタ州グランド郡(Grand County)公共図書館でも同様に,環境に優しい図書館建築を行った。Low-Eガラス,再生繊維を使用したカーペットなどの工夫のほか,地熱を利用した空調システムを導入し,環境負荷の軽減を実践した。しかし,LEEDの品質保証の取得については,査定プロセスが複雑で,高い費用を要することから、断念したという。

 LEED自体は,民間主導の発展途上の制度であり,現状では公共施設がこの制度を重視するかどうかは州によってばらつきがある状況である。しかしながら,採用する公共施設も増加しており,こうした公共図書館の環境問題への取り組み事例は,地域の文化を映し出すものとして参考になろう。

Ref:
http://www.ala.org/ala/alonline/currentnews/newsarchive/2006abc/november2006a/bozeman.htm
http://www.libraryjournal.com/article/CA6370904.html
http://www.ala.org/ala/alonline/tableofcontents/2006contents/apr2006.htm
http://www.bozemanlibrary.org/index.html
http://www.grand.lib.ut.us/
http://www.usgbc.org/DisplayPage.aspx?CategoryID=19