E576 – Windows Vistaの「日本語文字フォント問題」とは?

カレントアウェアネス-E

No.96 2006.12.06

 

 E576

Windows Vistaの「日本語文字フォント問題」とは?

 

 2006年11月30日,Microsoft社はWindowsシリーズの新しいOSとして,“Windows Vista”を企業向けに販売開始した。一般個人向けにも,2007年1月30日に販売される予定である。このWindows Vistaの販売開始に合わせ,Windows Vistaの日本語版で発生する「日本語文字フォント問題」について,Microsoft社やコンピュータ関連雑誌の出版社などが,ウェブサイトで注意を喚起している。

 Windows Vista日本語版では,JIS X 0213:2004(JIS2004)に対応した文字フォントを標準としている。JIS X 0213の規格名は「7ビット及び8ビットの2バイト情報交換用符号化拡張漢字集合」であり,それまでのJIS X 0208:1997(その直前の改正版であるJIS X 0208:1990の名称を取ってJIS90と呼ばれる。規格名は「7ビット及び8ビットの2バイト情報交換用符号化漢字集合」)で規定されている6,879字に加え,JIS第3・第4水準漢字や非漢字など4,344字を含むものとして,2000年に制定された。その後,2000年12月の文部科学省国語審議会答申で提示された『表外漢字字体表』に示された「印刷標準字体」に対応するべく,2004年,「辻」「葛」など168字の字形の見直し及び「痩」「嘘」などの異体字10字の追加を内容とする改正が行われた。Microsoft社は「日本文化に根ざした情報化社会の実現を引き続き支援するために」このJIS2004を採用したとしている。

 JIS2004とJIS90との間には,大まかに言えば2つの互換性の問題がある。1つは168字の字形の変更に伴うものである。「辻」(JISコード0x4454)の場合,JIS90では「1点しんにょう」であったが,JIS2004では「2点しんにょう」に変更された。この結果,「0x4454」の文字が,JIS2004環境と,JIS90環境とでは,異なったものとして表示・印刷されることになる。

 もう1つは新たに追加された4,354字に伴うものであり,これらの文字はJIS90環境では表示できないことになる。従来のWindows OSにおいても,JIS90以外の文字としてIBM拡張文字・NEC特殊文字のいわゆる「機種依存文字」や,JIS補助漢字(JIS X 0212:1990「情報交換用漢字符号−補助漢字」の文字)が標準フォントに採用されており,これらの文字をサポートしない他のOSや文字符号化方式(JIS2004の文字すべてを含んでいるUnicode/UCS用のUTF-8などを除く,従来のShift-JIS,EUC-JP,ISO-2022-JPなど)での対応が問題となっていたが,この対象がさらに拡大したことになる。JIS90の範囲では「森鴎外」としか表記できないが,JIS2004環境(JIS補助漢字でも同様だが)では,「おう」の字は偏が「はこがまえに品」になった異体字でも表記できる。このようなJIS90以外の文字がJIS90環境のシステムに渡されたときの対応が,問題となるのである。

 Windows VistaがJIS2004を採用したことにより,利用者があまり意識することなく,JIS2004で追加された文字を入力する機会が増えてくると考えられる。図書館においても,JIS2004環境でない場合には,OPACやウェブサイトなどで何らかの留意が必要となろう。

Ref:
http://www.microsoft.com/japan/windowsvista/jp_font/default.mspx
http://itpro.nikkeibp.co.jp/99/vista/index.html
http://www.watch.impress.co.jp/internet/www/column/ogata/
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/12/kokugo/toushin/001218.htm
http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0004964/
http://ja.wikipedia.org/wiki/JIS_X_0213