E575 – ChaCha−人間が検索エンジンに

カレントアウェアネス-E

No.96 2006.12.06

 

 E575

ChaCha−人間が検索エンジンに

 

 2006年11月,米国で検索エンジンChaCha(ベータ版)がリリースされた。チャットにより「本物の」人間のサポートを得ることができる,いわば人間がシステムの一部となった検索エンジンだ。Googleの欠陥を補いそれを乗り越ようとする検索エンジンはあまたあるが,ChaChaは,人間の知能,あるいは専門知識やコミュニケーション能力を検索エンジンの仕組みに直接的に組み込むことで解決を図ろうとしている。大学図書館を中心に定着してきているチャットレファレンスサービスとも競合するものであり,この点においても動向が注目される。

 検索インターフェースは,Google同様シンプルである。検索語を入れて“ChaCha Search”をクリックすれば「通常」の検索を行ってくれる。一方“Search With Guide”をクリックすると,即座にその検索語の示すトピックについて専門知識を持ったガイドが探しだされる。数秒後には,接続されたガイドから「何をお手伝いしましょうか?」といったインスタントメッセージが届く。後は普通の言葉で要望を伝えれば,ガイドが条件にあったサイトを代行検索してくれる。プレスリリースによれば,レスポンスに要する時間は,平均5分,難解なもので11分,簡単なものなら20秒程度だという。もちろん利用は無料である。

 最初に接続されたガイドが,本当にユーザの知りたいことについての知識を持っているかどうかは,もちろん確証はない。ガイドは,自分では無理と判断すれば適度なところで切り上げ,すぐに次のガイドを探すように促してくる。質問によってはたらい回しにされることもあるが,これが小気味良いサービスを生み出しているとも言える。ガイドのレスポンスもとても良い。チャットセッションの終了後には,ユーザはガイドを3段階で評価することになっている。

 ガイドはあくまで「本物の」人間である。18歳以上,英語が流暢,米国で働く資格がある等の条件をクリアし,テストに合格すれば簡単に登録可能である。学生,主婦,その他何らかのトピックについて詳しい知識を持つ人が,既に数万人登録している。ChaChaの裏側を紹介しているサイト“ChaCha Underground”ではガイドがジャンル別に一覧できるようになっており,それぞれの得意なトピックや最近検索し提供したサイトが表示されている。

 ガイドはボランティアではなく,給料が支払われている。レベルに応じて時給5ドルから10ドルの対価が支払われる。大学サイドのジャーナルでは,学生の雇用を生み出す新しい場として,好意的な記事が掲載されている。このような仕組みにより,ガイドの質,そしてサービスの質は,ある程度確保されているようだ。

 なお,大量のガイドを賄うための収益は,広告収入により得るという。ガイドからの検索を待つ間のもてあまされた時間が,ちょうどよいCMの時間になるとのことで,広告主の反応もよいようだ。ビデオ,CPC(Cost Per Click),リッチメディアバナーなど多用なフォーマットで広告を出すことができる。

 チャットを利用する成人人口が5,300万人ともいわれる米国。Googleに慣れ親しんだウェブユーザの心をどの程度捉えられるのか,そして図書館のチャットレファレンスサービスにどのような影響を与えていくのか,興味深いところである。

Ref:
http://www.chacha.com/
http://liswiki.org/wiki/List_of_libraries_providing_virtual_reference_services
http://underground.chacha.com/
http://www.chacha.com/info/press
http://www.cw.ua.edu/vnews/display.v/ART/2006/09/07/44ffc6bff306e
http://www.idsnews.com/news/story.php?id=38027&adid=campus
http://www.chacha.com/info/advertisers
http://www.pewinternet.org/PPF/r/133/report_display.asp