E500 – 司書職員が国立図書館長になれない理由(韓国)

カレントアウェアネス-E

No.85 2006.06.21

 

 E500

司書職員が国立図書館長になれない理由(韓国)

 

  韓国では,図書館および読書振興法(E376参照)第24条第1項の規定により,国家または地方自治体が設立・運営する公共図書館長は,司書職員(注)を充てることになっている。ところが国立図書館長には,司書職員が充てられていない。  

  国会図書館の場合,国会図書館法第4条の規定により,館長は国会議長によって任命される「政務職」と定められている。現在のペ・ヨンス館長も法学修士であり,政党職員の出身である。国立中央図書館の場合は,「文化観光部とその所属機関の職制」(大統領令第19439号)第37条の規定により,館長は1級の職級の国家公務員または同等の別定職国家公務員(特定の業務のために外部から任用される公務員)とだけ定められている。司書職員であることは要件になっておらず,実際にも,行政職員が就くことが通例となっている。2006年5月23日に着任したクォン・ギョンサン新館長も,文化観光部の広報官や観光局長,複合レジャー観光都市推進団長などを歴任した行政職員である。  

  このような,国立図書館長,特に国立中央図書館長が司書職員でない現状については,2006年5月25日付けソウル新聞が取り上げている。国立中央図書館を管轄する文化観光部によると,司書職員の中には館長の要件である1級の者がいないこと,また別定職公務員として外部に開放する職の数には上限(文化観光部全体で高位職の20%)があり,すでに上限に達してしまっているため外部の専門家も充てられないことから,館長に行政職員を充てているという。文化観光部は「現場中心の行政」を掲げているが,そのためにはまず,図書館の専門家を配置する現場中心の人事が必要ではないか,とソウル新聞はこの現状を批判している。  

(注)
司書職員になるには,文献情報学・図書館学の研究・履修歴に基づく司書資格証明が必要であり,一般の行政職とは異なる位置づけがなされている。
なお司書資格には1級正司書,2級正司書,准司書の3区分がある。最も一般的なのは2級正司書であり,文献情報学・図書館学の学士や修士が相当する。

Ref:
http://www.klaw.go.kr/CNT2/Easy/MCNT2EasyLawService.jsp?s_lawmst=60039
http://www.klaw.go.kr/CNT2/Easy/MCNT2EasyLawService.jsp?s_lawmst=60554
http://www.klaw.go.kr/CNT2/Easy/MCNT2EasyLawService.jsp?s_lawmst=55957
http://www.klaw.go.kr/CNT2/Easy/MCNT2EasyLawService.jsp?s_lawmst=73707
http://www.nanet.go.kr/libinfo/k01_profile.html?nav=010102
http://www.seoul.co.kr/news/newsView.php?id=20060525006009
E376