E512 – 印刷物 vs ネットワーク−メディア・ソフトの流通動向は?<文献紹介>

カレントアウェアネス-E

No.86 2006.07.05

 

 E512

印刷物 vs ネットワーク−メディア・ソフトの流通動向は?<文献紹介>

 

総務省情報通信政策研究所. メディア・ソフトの制作及び流通の実態に関する調査研究. 2006, 204p. (オンライン), 入手先< http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/pdf/060623_5_02.pdf >, (参照 2006-07-03).  

 総務省情報通信政策研究所は,映画,テレビ番組,音楽,新聞,雑誌,書籍といった各メディアの市場規模・市場動向に関する調査・分析を毎年行っている。2006年6月23日,2004年の各種統計に基づいた調査「メディア・ソフトの制作及び流通の実態」の報告書がウェブサイトで公表された。  

 本調査の特徴は,複数のメディアで提供されるソフト(コンテンツ)の市場動向も把握できるように,テレビ番組や新聞記事といった「メディア・ソフト」と,テレビ放送や新聞販売といった「流通メディア」とを区分している点にある。その上で,各メディア・ソフトの制作市場,最初に提供したメディア(「一次流通」)の市場,一次流通の後に再度提供したメディア  (「マルチユースによる流通」)の市場,の各々の特徴を,業界や市場の構造も含めて詳細に分析している。  

 本報告書においては,新聞記事・コミック・雑誌記事・書籍などを「テキスト系ソフト」というカテゴリーに分類している。いずれのテキスト系ソフトにおいても,印刷物の形で販売される一次流通の2004年の市場規模は,2000年と比べ減少していたという。特に,コミックと雑誌記事は11%減,新聞記事も7.6%減と,書籍の1.5%減に比べて減少幅が大きかった。これに対し,マルチユースの市場規模は,新聞記事が61%,コミックが6.9%,書籍が9.7%と増加していた。特に大きく増加したのは,新聞記事・雑誌記事のDB販売や,各ソフトのインターネット配信の市場規模であった。雑誌記事の場合は,マルチユース市場規模が全体で2.4%減少していたが,この原因は雑誌記事を単行本化して販売する市場の減少に伴うものと考えられる。ページに換算した各コンテンツの制作量・一次市場流通量・マルチユース市場流通量も調査されていたが,この結果でもコミック・雑誌記事・書籍は一次市場流通量が減少していた。新聞記事だけが,一次市場流通量が増加していた  が,これは1紙あたりのページ数が増えたことによるものであり,発行部数は減少しているという。  

 なお,データベース記事もテキスト系ソフトに含まれている。途中で推計方法の見直しが行われたため,数値での表現はできないが,市場規模,流通量とも増加傾向にあるという。報告書は全体の傾向として,マルチユース市場,ネットワーク流通が拡大していると結論付けているが,テキスト系ソフトに限っては,印刷物の流通が減少しているという傾向も指摘できよう。

Ref:
http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/060623_5.html