E431 – エイズの予防に図書館はどう貢献できるか?

カレントアウェアネス-E

No.74 2006.01.11

 

 E431

エイズの予防に図書館はどう貢献できるか?

 

 全世界でHIV/AIDSが蔓延している。中でも,サハラ砂漠以南のアフリカ諸国の状況は深刻で,2004年時点で世界中のHIV/AIDS感染者の3分の2に当たる約2,500万人が集中している。

 エイズを予防するための最大の武器は正確な情報の普及である。特に,感染の危険性の高い若者に対する教育段階での情報提供は重要であり,各国の政府ともに力を入れ始めている。では,こうしたエイズ予防政策という局面において,情報提供機関である図書館はどのように貢献できるだろうか? 大統領諮問機関である米国図書館情報学国家委員会(NCLIS;E331参照)は2005年12月,その可能性を探り,提言を行うレポートを公表した。

 アフリカにも図書館は合計1,000館以上存在するが,口伝中心の文化,多言語環境,教育水準の低さといった環境の中で,植民地時代に輸入されたコレクション中心の図書館は,人々の生活に密着しているとは言い難い。そこで,アフリカの現状においては,図書館は地域の人々が必要とするHIV/AIDS情報を広範に収集し共同体に提供するリソースセンターの役割を果たすべきであると提言している。それは,資料の収集と情報の普及という図書館本来の機能を拡張するもので,教育機関やNGO,ラジオ局等とネットワークを築き,HIV/AIDSに関連する情報資源(現地語による出版物や商業出版ルートに乗りにくい情報も含めて)を収集し,地域の人々(特に若者や女性)に対して分かりやすい形(例えば現地語への翻訳や物語化,ラジオ放送など)で提供するといったモデルが提示されている。

 NCLISは,こうした方向で図書館を定義し直すことは,アフリカに限られるものではなく,他の発展途上国や米国のような先進国にも有効であると強調している。

Ref:
http://www.nclis.gov/news/pressrelease/pr2005/2005-12LibrariesAfrica.pdf
http://www.nclis.gov/LibrariesandHIVinfo.pdf
http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/pr/pub/pamph/toa.html
E331