カレントアウェアネス-E
No.66 2005.09.21
E382
機関リポジトリと図書館員の役割 <文献紹介>
Allard, Suzie et al. The librarian’s role in institutional repositories: A content analysis of the literature. Reference Service Review. 33(3), 2005, 325-336.
2005年7月下旬, 千葉大や早稲田大に続いて北海道大でも機関リポジトリ「HUSCAP(ハスカップ)」が正式公開され,日本でも機関リポジトリ(IR; E323参照)が大学・図書館レベルで実際に運営されるようになってきた。この3大学のIRの運営は,図書館が中心となって行われているが,このような中で図書館員は果たしてどのような役割を担うべきなのだろうか。
アラードらは,2000-2004年に発表されたIR関連の30論文に対して内容分析を行っている。それによると,概念の新しさや流動性もあって図書館や図書館員の果たすべき役割はそれほど議論されているわけではないが,1)IRソフトウェアの理解,2)IR実装の計画と管理,3)収集指針の提供,4)簡略明快なメタデータ標準の作成,5)品質管理とメタデータの一貫性維持,6)著者に対するIR利用指導の6点が,IR構築運営における図書館員の役割・責任だとしている。たとえば,6)の利用指導については,著者(つまり研究者)はIRにとって非常に重要であるため,図書館員は積極的にこの役割を遂行しなければならないし,さらに保存に適した文書作成法などについても指導すべきではないかと述べている。
上記3大学以外にもIRを試験運用している大学もあり,図書館および図書館員が日本のIR構築運営の中心的役割を担うことを期待したい。
(慶應義塾大学大学院:三根慎二)