カレントアウェアネス-E
No.107 2007.05.30
E654
NII次世代学術コンテンツ基盤共同構築事業中間報告<文献紹介>
国立情報学研究所.次世代学術コンテンツ基盤共同構築事業中間まとめ.2007.17p.(オンライン), 入手先, (参照2007-05-30).
国立情報学研究所(NII)は各大学のコンピュータ設備やソフトウェア,学術コンテンツ及びデータベースをネットワーク上で共有し,人材育成や推進体制の整備を図る最先端学術情報基盤(Cyber Science Infrastructure:CSI)の構築を進めている。その一環として行われている次世代学術コンテンツ基盤共同構築事業は,機関リポジトリ(Institutional Repository:IR)の構築と各大学間における連携支援を目的としたものである。
この事業は2004年度に国立6大学と共同で実施したIR構築ソフトウェア実装実験プロジェクト(E323 参照)に端を発し, 2005年度には19大学のIR構築・運用事業を支援した。そしてこれらの成果を踏まえ,2006年度には「IRの構築・運用事業」に加え,それを発展させた「先駆的な研究開発事業」にも支援を拡大し,各事業の公募を行った。
2006年度の「IRの構築・運用事業」は,IRの全国的な展開を目的とし,57大学を対象として実施された。各大学で生産された学術情報や研究成果の蓄積・発信基盤を強化するため,大学の独自性を生かしたIRの構築・運用を推進している。本報告書では,各大学のシステムの導入状況,コンテンツの蓄積状況,運用体制と優良実践例8件を紹介している。
また「先駆的な研究開発事業」では,多様なメタデータの相互変換システムの開発やIRコミュニティの活性化等,IRの更なる活用を図る22のプロジェクトが実施された。本報告書では,そのうち,「AIRway」(北海道大学等)(E622参照),「機関内学術情報資源の統合検索」(九州大学),「XooNIps Libraryモジュールの開発」(慶應義塾大学)等,高い評価を受けた6件が紹介されている。
学術コンテンツの保存とアクセスの保証は喫緊の課題となっている。本報告書により,大学等の学術機関が連携してコンテンツを共有,確保し,広く発信していくための情報基盤としてのIRの有効性と可能性,そして,今後も継続的にIR運用を支援していくという,NIIの方針とその成果を確認することができる。