カレントアウェアネス-E
No.66 2005.09.21
E381
名古屋大学電子図書館国際会議 <報告>
8月25日から26日にかけて,「電子図書館研究のフロンティアの開拓」を目的とした,名古屋大学電子図書館国際会議が同大学野依記念学術交流館で開催された。基調講演を含め,2日間で計16本の発表が行われ,5か国から約170名あまりが参加した(大半は日本)。
初日は,Webマイニング,機関リポジトリやデジタル化事業の事例,電子図書館サービス評価の課題,デジタルレファレンスサービスに関するアンケート調査結果,国立国会図書館の電子図書館中期計画2004の紹介など多種多様な報告がなされた。特に,タイ政府の主導によりバンコクの中心街に新しく設立されたThai Knowledge Park(情報通信技術が駆使された生涯学習施設)の紹介は,参加者の関心を一際集めていた。
2日目も,自動メタデータ抽出,ユーザ中心設計の紹介,電子図書館サービスの抽象モデルの提案,電子ジャーナルコンソーシアムの軌跡,国立情報学研究所における書誌データ統合の実際,日本の電子図書館の歴史的考察など幅広い報告がなされた。特に,中国の書誌ユーティリティCALIS(CA1443参照)で取り組まれているChina Academic Digital Library計画は,国家規模の電子図書館サービスを目指しており,スケールの壮大さを窺い知ることができた。
事例報告を聞いた限りにおいては,目指す電子図書館サービス像はどこも変わらない印象を受けた。裏返せば,国や機関を超えた新たな協同が可能であることを示唆していたと思われる。
(報告:塩崎亮)