CA1443 – 中国の図書館ネットワーク-CALISの現状- / 村上かおり

カレントアウェアネス
No.268 2001.12.20


CA1443

中国の図書館ネットワーク―CALISの現状―

CALIS(China Academic Library and Information System:中国高等教育文献保障系統)とは中国の大学図書館ネットワークで,国家プロジェクトとして1998年11月にスタートした。70の大学が参加し,CERNET(中国教育・研究ネットワーク)を利用して図書館情報資源の共有化を図っている。利用者(学生)は70万人に及ぶ。財源は現在のところは大半が中国政府によって支えられているが,商業ベースでの活動も視野に入っているという。

CALISは四つの全国文献情報センター,七つの地区センター,その他の参加館,という三階層からなる。全国文献情報センターはそれぞれ担当分野があり,北京大学が人文・社会・自然科学,精華大学が技術工学,中国農業大学が農学,北京医科大学が医学を担当している(いずれも北京市)。地区センターは,華東南を上海交通大学,華東北を南京大学,華南を中山大学,華中を武漢大学,西南を四川大学,西北を西安交通大学,東北を吉林大学がそれぞれ担当している。

さて,CALISの機能は次の六つである。(1)情報検索,(2)図書館間貸出,(3)文献配送,(4)電子情報ナビゲーション,(5)総合目録作成,(6)共同収集。(1)としては,CALISのWebサイトから総合目録その他の目録が検索可能である。ネットワーク外部からは中国語・英語,さらには日本語図書の検索も可能(日本語をそのまま入力できる)であるが,中国語雑誌記事索引や学位論文,会議録などにはアクセスできない。また,各大学が作成している特定主題データベース(http://www.calis.edu.cn/oldhome/newpage5.htm)のページもあり,「長江資源データベース」や「有色金属データベース」などの興味をそそるデータベースが用意されている。ただ,日本からうまくアクセスできるものが少ないのは残念である。

(2)と(3)については,CALISのWebサイトから資料検索・申込みが一貫して行えるようになっている。文献は複写・ファックスサービスのほか,スキャナによる読取りも可能で,電子情報はメールなどの形で受信することができ,7日以内に提供されるという。

このシステムが十全に機能すれば,非常に有用で,利用者にも歓迎されるだろう。しかし,現実は必ずしもうまくいっていないようである。Webサイトの掲示板には「なぜこんなに遅いのか」「接続できないことが多い」といった不満の声も見られる。各大学の機械化の水準が異なることが,総合目録の作成作業や図書館間貸出を妨げているともいう。

課題があるとはいえ,CALISが中国学術界を支える画期的なシステムであることは間違いない。情報インフラの未整備を,国家プロジェクトとして,ときには大胆に商業資本を導入して集中的に補うのが中国のやり方である。CALISがこれからどのように発展していくのか,その動向に注目したい。

村上 かおり(むらかみかおり)

Ref: CALIS. [http://www.calis.edu.cn/] (last access 2001. 9. 25)
Longji, D. et al. China academic library and information system. Infor Technol Libr 19 (2) 66-70, 2000
鮑延明 中国におけるディジタル図書館の現状 ディジタル図書館 (18) 2000[http://www.dl.ulis.ac.jp/DLjournal/No_18/2-ymbao/2-ymbao.html](last access 2001. 9. 25)