カレントアウェアネス-E
No.56 2005.04.06
E315
デジタル著作権管理(DRM)への懸念と図書館
電子フロンティア財団(EFF)など11団体は3月,デジタル著作権管理(DRM)について調査している国連の国際電気通信連合(ITU)に向けて,DRMシステムへの懸念を表明する報告書を提出した。報告書では,DRMが,本来であればデジタル環境になることで恩恵を受けられるはずの発展途上国に,より厳しい制約を課すことになっていると警鐘を鳴らしている。例えば,遠隔教育を促進するため,著作権法制度で教育目的による例外を規定しているにもかかわらず,DRMがその実効性を阻害しているといった事例が紹介されている。また,先進国においても,消費者の自由を制限するとともに,回避禁止の法制度(CA1478参照)によって研究開発にも影響を与えており,こうした広範囲に悪影響を及ぼすDRMについては再考を促すべきであると主張している。
また,図書館が担ってきた,全ての人に情報へのアクセスを保証するという役割が,DRMによって狭められていく可能性についても言及している。例えば,ウガンダでは,移動図書館で電子本のオンデマンド印刷サービスを行っているが,こうした斬新なサービスがDRMによってどのような影響を受けるか懸念されている。また,回避禁止規定によって,通常サービスである貸出,複写,あるいは媒体変換を伴う長期保存などにも影響は及ぶと指摘している。ドイツ国立図書館は1月に回避を可能とする協定を締結した(E310参照)が,図書館界としてDRMへの理解と対応が求められる時代を迎えている。