E454 – 英国の図書館界,DRMに対する懸念を表明

カレントアウェアネス-E

No.78 2006.03.08

 

 E454

英国の図書館界,DRMに対する懸念を表明

 

 英国図書館(BL)や図書館・情報専門家協会(CILIP)等で構成する図書館・文書館著作権同盟(Libraries and Archives Copyright Alliance)は,2月6日,デジタル著作権管理(DRM;E315参照)システムが図書館に及ぼす影響について懸念を示す文書を公表した。これは,超党派の議員インターネットグループ(All Party Parliamentary Internet Group:APIG)が昨年11月から行っている調査に応えて提出されたもので,DRMによるコピー防止機能やその回避禁止規定により,図書館が著作権法の枠内で伝統的に果たしてきたコピーの作成・提供といった機能が不全に陥るとし,その解決に向けた取り組みを求めている。

 また,2月2日には下院でAPIGによるヒアリングが行われ,BLや王立視覚障害者援護協会(RNIB)の代表者が意見を表明した。RNIBからは,実際にDRMによって電子本の読み上げが阻害されている事例等が報告された。BLは,2020年には出版物の90%がデジタルで利用可能になるという予測(E349参照)の下,こうした状況においてDRMは長期的な保存とアクセスの確保という図書館の役割に否定的な効果を及ぼしかねず,著作者の権利と公益性とのバランスを崩しかねないと主張した。そして,これまでに定着している公正使用や図書館特権条項がデジタル出版物にも適用されることが保障されるように,著作権法の改正が必要であるとの見解を示した。APIGは,情報産業界や消費者団体にも意見を聞き,4月にレポートを発表する予定となっている。

 なお,DRMについては米国でも関心が強く,1月に米国図書館協会(ALA)がDRMの図書館員向けガイドを発行している。

Ref:
http://www.bl.uk/news/2006/pressrelease20060206.html
http://www.cilip.org.uk/professionalguidance/copyright/lobbying/apig.htm
http://news.zdnet.co.uk/business/0,39020645,39250168,00.htm
http://news.bbc.co.uk/1/hi/technology/4675280.stm
http://www.apig.org.uk/current-activities/apig-inquiry-into-digital-rights-management.html
http://www.theregister.co.uk/2005/11/15/outlaw_parliament_drm/print.html
http://www.ala.org/ala/washoff/WOissues/copyrightb/digitalrights/DRMfinal.pdf
E315
E349