カレントアウェアネス-E
No.449 2022.12.22
E2563
日本のアニメ総合データベース「アニメ大全」
一般社団法人日本動画協会/『アニメNEXT_100』プロジェクト事務局・植野淳子(うえのじゅんこ)
2022年8月25日に公開された「アニメ大全」は,2017年1月に100周年を迎えた日本のアニメーションの過去と未来を繋げるために,一般社団法人日本動画協会が2015年9月より準備会を発足しスタートさせた『アニメNEXT_100』プロジェクトの集大成である。プロジェクトの目的は,文化と産業が一体となっている「アニメ」の更なる未来を創り続けるために個社対応だけでは難しいとされる,創作物・情報・知財の散逸・劣化・消失の危機への対策,急務とされる人材育成,制作環境と産業構造の変化など,「アニメ」の持つ共通の課題を解決する一助を成す基盤の構築を目指すことである。
『アニメNEXT_100』の具体的な取組として,「日本のアニメ史の網羅=アニメ大全」,「人材育成」,「ビジネス」の視点から三つのプロジェクトを推進した。結果,課題解決にむけた共通の施策として,「日本のアニメアーカイブ」というテーマが浮き彫りになった。その実現のためには,産業界を含めた幅広い利活用者が相互に「アニメ」の知財活用に対するリテラシーを共有することが急務であると考え,その具体的な方策の第一歩として,日本のアニメーション総合データベース「アニメ大全」の構築を進めてきた。
●「アニメ大全」の概要
「アニメ大全」は,日本のアニメ史を網羅するデータベースであり,同時に日本のアニメアーカイブを促進するための共通基盤として活用されることを目的としている。1917年から現在までに日本で制作・初公開されたアニメのジャンルは幅広く,その数は膨大であり,時代の変遷,技術の進化にしたがって多様化する,製作方式・制作形態・職種・記録媒体・公開手法と場など,諸般の事情から今後再視聴が出来なくなる可能性を危惧される作品も少なくない。同時に,テレビアニメの草創期から現在までを知り,かつデータベースへの知見を持つ人々が現役でいる間に「アニメ大全」を作らないと,歴史を繋げられる機会を失ってしまうという切実な理由もあった。
そこで,協会をはじめとする産業界のメンバーに加え,多くの研究者・専門誌関係者をはじめとする多彩な有識者による協力のもと議論を重ね,「アニメ大全」の定義が策定された。各氏より提供される紙・映像資料・専門誌資料・電子媒体,関係者インタビュー等,各時代に残されている様々な形態の情報をもとにメタ項目が設定された。その後7年をかけて,データ更新フローを改善し,現在では周知情報を一次情報とし,その後関係者からの提供情報や事務局調査によってデータベースの拡充を続けている。2022年11月18日現在の作品タイトル数は1万5,243件(映画2,832件,テレビ7,083件,OVA4,071件,その他1,257件),存在が判明しているエピソード数は17万9,899件となっている。
●「アニメ大全」の特徴
データベースとアーカイブの一体活用を目的とする「アニメ大全」の主な特徴は以下の3点である。
- メタ項目
基本情報と詳細情報が,アーカイブ化に必要な作品ごとの管理情報として活用可能である。 - 50音検索と年代検索
アニメ作品が埋蔵文化となってしまわないよう,個別作品を関連付け表示する検索機能を設置している。記憶が曖昧でも,事前知識がなくても「アニメ」が検索可能となっている。 - 詳細検索
人名・会社名等典拠情報の整備が不可欠であるが,現在はタグを充実させることにより精度の向上を図っている。
●要望・問い合わせ
公開からおよそ4か月,当初の想定を超えた利用状況が続いている。そうした中で,問い合わせの多くは,以下のような「アニメ大全」データベースの拡充と,アーカイブに関する内容である。
- 詳細検索を充実した方が良い
- データベースに参加したいがオープンソース化は行われるか
- 制作アニメーターなどをより詳しく掲載して欲しい
- 動画を掲載して欲しい
- 作品を見ることができる場所を教えて欲しい
- 作品を預かってもらえるか
- 多言語化して欲しい
●今後の課題
「アニメ大全」を今後も継続していくにあたり,運営チームの育成をはじめとする,安定した事業基盤の構築のためには,以下のような課題に取り組む必要がある。
- 膨大な典拠データの収集と整備
- 権利者と利活用者間で共通となる知財の運用施策等のアニメリテラシーの整備
- アニメアーキビスト,データ運営の担い手などの職域を規定し,多世代交流による専門知識の継承を行う育成プログラムと専門機関の整備
- 事業運営費の確保
●アニメの未来を創る基盤として
日本文化の一翼を担うアニメだが,残念ながら網羅性の高い専門所蔵館はなく,出版物の納本制度のような,広く周知され共通認識となっている作品アーカイブのスキームも希少である。一方で規模に差異はあるが,アニメ作品を収蔵している機関は少なからず存在している。そこで,「アニメ大全」が日本のアニメ作品を所蔵する機関共通のマスターデータベースとしての役割を担い,活用されることでアニメアーカイブが促進され,その結果,利活用者それぞれに異なる想像力を触発する機会を創出し,未来の創造力へと繋がることへの一助となるよう発展を目指したい。
Ref:
“@AnimeNext100”. Twitter. 2022-08-25.
https://twitter.com/AnimeNext100/status/1562666104027172867
アニメ大全.
https://animedb.jp/
一般社団法人日本動画協会.
https://aja.gr.jp/
“『アニメNEXT_100』 とは”. アニメ大全.
https://animedb.jp/animenext100