E2571 – 第31回京都図書館大会<報告>

カレントアウェアネス-E

No.450 2023.01.19

 

 E2571

第31回京都図書館大会<報告>

京田辺市立中央図書館・釘本容子(くぎもとようこ)

 

  2022年11月28日,「連携する図書館」をテーマとし,ライブ配信で第31回京都図書館大会が開催された。今大会では,図書館間での連携やさまざまな機関と連携することによって,新たな形の図書館サービスを提供することについて,講演や事例発表が行われた。

●基調講演

  青山学院大学教授の小田光宏氏より「連携のこそあど:図書館〇つながる」と題して基調講演が行われた。今回の大会テーマでも用いられている「連携」という言葉であるが,「図書館における連携って何だろう」という問いが投げかけられた。「協力」「相互」等とどのように違うのかについて,国語辞書や図書館情報学用語辞典を参照して,その意味を認識したうえで,講演が進められた。まず,「連携」に対してどんな論議があるのかということで,『図書館雑誌』等の専門誌での特集テーマを列挙した。学校図書館に関する記事が多いことから,学校図書館が「連携」を強く求めていることが推測できうるとして,館種の特性は「連携」に伴う事象に影響を与えているのではないかと述べた。また,連携先が外部組織に加え,人や活動,同一母体内の他部署,地域,家庭へと広がっていると述べた。

  視点を変え,図書館が日常業務として行っている「レフェラルサービス」「相互貸借」「ボランティア団体による対面朗読・読み聞かせ」等を「連携」と意識しているのかと問う中で,どれも広い意味で「連携」と捉えられると述べた。講演テーマである「図書館〇つながる」の〇に一文字の「助詞」を入れてみることで,「主体という視点」「内容という視点」「対象という視点」で「連携」を相対的に捉えてみることを提示した。さらに,「連携」の実態を把握することができるかということについて,全国規模の実態調査やカレントアウェアネス・ポータルで検索し,事例が把握できると紹介された。最後に持続的な「連携」に向けての実践課題として,第1に「連携」の維持に必要となる「人」の力,第2に出発点・基盤となる他の館種との「連携」,第3に「連携」の基礎となる柔軟な発想が必要であると締めくくった。

●事例発表1「地域図書館の挑戦」

  豊橋市まちなか図書館(愛知県)の種田澪氏から,複合施設に併設され開館から1年となる同館の取組について発表があった。「知と交流の創造拠点」をコンセプトとして,「訪れる人が主役」,「図書館を利用したことのない人も足を運びたくなる場」を意識し,さまざまな展示やイベントを行っている。例えば,市内の劇場・企業・病院・学校・博物館等のコラボ企画,社会人を対象に色々な話題について語り合う「図書館夜会」や「館長がいま会いたいひと」と題したトークイベント等,館の特色を生かした行事も紹介された。すべてのイベントに共通することとして,「人と人」,「人と情報」をつなげることを重視し,しっかりとした基準をもって企画の決定がなされていると述べた。

●事例発表2「地域密着型プロレス団体とのコラボにおける実践事例」

  東京都板橋区立東板橋図書館の最上琴子氏から,板橋区公認プロレスリング団体「いたばしプロレスリング(通称「いたプロ」)」とのユニークな連携活動(E2389参照)が報告された。板橋区では,「絵本のまち板橋」として絵本文化の展開・発信を広く進めているが,図書館をあまり利用しない人へのアプローチとして,図書館から「いたプロ」に事業連携を提案した。さまざまなイベントの開催,図書館プロレスラー「としょカーン」のデビュー,「いたプロ絵本読み聞かせ動画」等コロナ禍での活動を報告した。充実する「いたプロ」の地域活動が橋渡しとなり,図書館が区の事業等で多重の連携ができたことや,今後の展望を述べた。

●事例発表3「地域とつながる~認知症にやさしい取り組みを中心に~」

  京都市岩倉図書館の井上典子氏から,京都市図書館が取り組んだ認知症の療法の一つである回想法の実践と認知症関連イベント等について報告された。認知症への取組は地域の課題でもあり,同館でも高齢者の利用の割合が高いことから,図書館で何かできないかと考え,2016年に同市内の病院の認知症カフェにおいて,昔の懐かしい道具を見たり,触れたりしながら思い出を語り合う「回想法」を実施し,昔話の読み聞かせを始めた。その活動がマスコミに取り上げられ,大きな反響があった。また大学生等の他世代交流・他職種協働につながり,さらに職員が認知症について学習・研鑽を積むことにより図書館と地域の連携が深まったと報告した。最後に「図書館は市民に必要なインフラだと認識してもらうことが重要」と締めくくった。

  2022年度もコロナ禍の中でオンライン開催となったが,さまざまな「連携」を知ることができ,大変有意義な大会であった。自館の参考にすることで,さらに図書館の存在意義を深めていきたい。

Ref:
“第31回京都図書館大会【令和4年11月28日(月)開催】”. 京都府立図書館.
https://www.library.pref.kyoto.jp/council/libconf/31/
豊橋市まちなか図書館.
https://www.library.toyohashi.aichi.jp/facility/machinaka
板橋区立東板橋図書館.
https://itabashi-higashiitabashi-lib.jp
京都市図書館.
https://www2.kyotocitylib.jp
最上琴子.図書館プロレスラーとしょカーン誕生:地域連携での情報発信. カレントアウェアネス-E. 2021, (414), E2389.
https://current.ndl.go.jp/e2389