E2570 – 博物館・公民館と課題共有:非正規雇用職員セミナー<報告>

カレントアウェアネス-E

No.450 2023.01.19

 

 E2570

博物館・公民館と課題共有:非正規雇用職員セミナー<報告>

日本図書館協会非正規雇用職員に関する委員会・利光朝子(としみつあさこ)

 

  日本図書館協会(JLA)非正規雇用職員に関する委員会は,2022年11月28日非正規雇用職員セミナー「社会教育施設で働く非正規雇用職員」をオンライン形式で開催した。

  2021年度の文部科学省の社会教育調査の中間報告によると,博物館・公民館・図書館の非正規雇用職員率(全職員における非常勤および指定管理者の職員の割合)はそれぞれ62.4%・80.5%・74.7%と差はあるものの高い水準である。当委員会では毎年図書館の非正規雇用職員についてのセミナーを開催してきたが,雇用問題のみならず専門職制度を考える上でも他の社会教育施設の非正規雇用職員の現状を知る必要があるとの認識から,今回のセミナーでは,博物館・公民館・図書館のそれぞれの専門職による現状報告とセミナー参加者を交えた全員での意見交換を行った。

  博物館については,北海道浦幌町立博物館学芸員の持田誠氏が報告した。持田氏は,大学博物館や市立博物館で非常勤職員として勤務し現在の博物館で2021年に正規採用の学芸員となった。社会教育調査から漏れている私立博物館も多く,また,学芸員として「発令」されないまま学芸員業務を行っている人もいるなど,学芸員の人数を把握することは困難であると説明された。学芸員の仕事は資料の収集・保存・展示等だけでなく調査研究し発表することが特色で,非正規雇用職員は「高学歴ワーキングプア」とよばれる状態になっていることが報告された。その上で,技術経験の蓄積・利用者との関係の構築・後継者育成等が求められ「失われつつある資料を100年残す」学芸員には,非正規雇用職員は適さないと強調された。最後に,博物館の設置形態・職員の任用形態が多様なため困難な,学芸員の組織づくりの必要性が提起された。

  公民館については,社会教育主事任用資格を持つものの発令されないまま公民館の専門職員として都内公民館に勤務し,女性関連施設での勤務経験もある佐藤真理子氏(仮名)が報告した。社会教育に関する専門職として,社会教育法に定められているが学芸員と同様資格があっても発令されなければ職務につけない「社会教育主事」と,発令されなくても名乗れる資格「社会教育士」があること,公民館は,自治体により直営・指定管理など運営形態が異なり,非正規雇用職員の応募要件の資格も社会教育主事・社会教育士・教職・社会福祉士なども様々であることが報告された。また会計年度任用職員制度で問題となっている再度任用時の公募について,非正規雇用職員の殆どが組合加入しているある自治体が,4年という上限はあるものの「公募によらない再度任用の要件」を明文化している例なども挙げられた。最後に,外部からの圧力で正規職員が公民館図書室の一部の本を閉架にした際,非正規雇用職員の立場から反対できなかった経験から,学習権の保障のためにも正規職員と対等に話せることの重要性が語られた。

  図書館については,東京都荒川区立図書館に非正規雇用職員として20年以上勤務する荒川区立ゆいの森あらかわ図書専門員の大場康智氏より報告があった。JLAの『日本の図書館 統計と名簿』によると,公共図書館の非正規雇用職員は7割以上で,正規職員より司書有資格者率が高いなど,非正規職員の「基幹化」が進み,前出の社会教育調査によると,非常勤職員のうち女性は8割以上となる。その実態についてJLAが2018年12月から2019年1月に実施した「公共図書館における非正規雇用職員に関する実態調査」から労働条件・賃金・仕事の内容・満足度等について報告された。また2020年度に始まった会計年度任用職員制度が雇用条件の改善に必ずしも結びついていないことや非正規雇用職員の労働組合加入の重要性も指摘された。

  全員による意見交換では,それぞれの専門職制度の課題や,指定管理者制度・民営化の影響,資格を取得しても就職に結びつかないといった養成課程の課題など,多岐にわたる問題が議論された。その中で,現場の人がつながること,専門職が職能団体・組合等を通じて同職種で連携していく重要性が共有された。

  持田氏が指摘した経験の蓄積・利用者との関係構築といった長期間の勤務で培われる専門職の特性は,博物館・公民館・図書館に共通のものであり,本来非正規雇用職員が担っていくものではない。しかし職務を限定されない一般行政職が主導権を持つ自治体行政において,専門職は傍流視され「非正規化」し,「女性労働化」が進んできたと感じている。今回の議論の中で挙がった,それぞれの専門職の組織化や組合活動の必要性を共通の課題とし,今後も社会教育施設で働く者として,連携しながら取り組んでいきたい。

Ref:
“日本図書館協会非正規雇用職員に関する委員会”. JLA.
https://www.jla.or.jp/committees/tabid/805/Default.aspx
“社会教育調査”. e-Stat.
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00400004&tstat=000001017254
社会教育士.
https://www.mext.go.jp/a_menu/01_l/08052911/mext_00667.html
日本図書館協会非正規雇用職員に関する委員会. 公共図書館における非正規雇用職員に関する実態調査. 50p.
https://www.jla.or.jp/Portals/0/data/iinkai/seisakukikaku/chousakekka_20100608%202.pdf
“会計年度任用職員に関する提言”. JLA. 2022-01-24.
https://www.jla.or.jp/demand/tabid/78/Default.aspx?itemid=6172