E2494 – Web NDL Authoritiesの拡充:著作とジャンル・形式用語

カレントアウェアネス-E

No.435 2022.05.26

 

 E2494

Web NDL Authoritiesの拡充:著作とジャンル・形式用語

収集書誌部収集・書誌調整課・木村千枝(きむらちえ)

 

  国立国会図書館典拠データ検索・提供サービス(Web NDL Authorities)は,国立国会図書館(NDL)が作成し維持管理する典拠データを一元的に検索・提供するサービスである。また,国立国会図書館オンライン(NDLオンライン)と連携し,典拠データを利用した資料の検索も実現している。Web NDL Authoritiesは2011年7月に開発版を公開し(E1198参照),2012年1月から本格稼働した。2017年には『日本十進分類法 新訂10版』(CA1850参照)適用に伴う分類記号検索機能の改善とSPARQL 1.1に対応したエンドポイント(試行版)の公開,2018年には典拠IDによる検索機能の追加など,この10年の間に徐々にサービスの改善を図ってきた。

  2021年1月,Web NDL Authoritiesは,著作典拠およびジャンル・形式用語典拠の提供を新たに開始した。典拠データの拡充は「国立国会図書館書誌データ作成・提供計画2021-2025」(CA2006参照)に掲げる取組の一つである。本稿では,著作典拠およびジャンル・形式用語典拠の提供開始から約1年経ったWeb NDL Authoritiesの現況について紹介する。

●著作典拠

  NDLにおいて『日本目録規則2018年版』(CA1951参照)の適用開始(2021年1月)とともに導入された「著作」とは,作品そのものを表す抽象的な概念である。著作典拠には,個々の資料に現れるタイトルの表記のゆれ,タイトルや言語の違いに関わらず,同一「著作」を具体化した資料のタイトルの表示形がまとめられ,資料それぞれの書誌データもリンク付けされる。それゆえ,Web NDL Authoritiesから著作典拠を利用してNDLオンラインを検索すると,同一作品の異なるタイトルの資料をまとめて検索できるようになる。

  NDLでは,資料が復刻・翻刻または翻訳(現代語訳・口語訳を含む)された古典作品の場合と,日本語訳のタイトルが複数存在する近現代の外国語作品の場合に,その原著作に対応する著作典拠を作成している。また,著作典拠のリンク対象とするNDLオンラインの書誌データは,原則として2021年1月以降にデータを作成した日本語図書,国内刊行の欧文図書の一部であるが,2022年4月から,外国刊行の欧文図書の既存書誌データについても著作典拠とのリンクを開始した。さらに日本の古典作品については,国立国会図書館分類表(NDLC)および日本十進分類法(NDC)の分類記号をもとに調査を行い,著作典拠を新設し,遡及的に書誌データへのリンクを追加している。

  2022年3月末現在,作成した著作典拠は283件,リンクした書誌データの総件数は約3,000件である。そのうち,上記調査により作成した日本の古典作品の著作典拠は18件であり,1,309件の書誌データと遡及リンクを行った。著作典拠は,Web NDL Authoritiesの詳細情報画面からの1件ごとのダウンロードに加えて, Web NDL Authoritiesのヘルプページにある2021年6月公開の「著作典拠一覧」から一括ダウンロードも可能である。

●ジャンル・形式用語典拠

  ジャンル・形式用語は,その資料が「何であるか」を表す統制語彙であり,資料の形式または内容の類型を表す。Web NDL Authoritiesからジャンル・形式用語典拠を利用してNDLオンラインを検索すると,同じジャンル・形式の資料をまとめて検索できる。例えば, NDCでは,分類記号726.1に漫画作品が収められるが,哲学,経済など特定主題を扱った漫画は各々の分類記号に収められる。このようなNDC726.1以外に収められた漫画も含めて検索することができる。

  NDLでは,2021年1月から,「漫画」「児童図書」「LLブック」「議会資料」の4つの用語でジャンル・形式用語典拠の適用を開始し,日本語図書,国内刊行の欧文図書の一部の書誌データとのリンクを行ってきた。2022年1月からは「漫画」「議会資料」について,日本語逐次刊行資料と国内刊行の欧文逐次刊行資料の書誌データへもリンクを始めた。2022年4月からはジャンル・形式用語典拠「楽譜」「コンピュータゲーム」「アニメーション」を新たに作成し,リンク対象を日本語の非図書単行資料と国内刊行の欧文非図書単行資料の書誌データにも拡大したところである。

  2021年1月以降に作成された書誌データがリンク対象だが,「漫画」「LLブック」については,日本語図書,国内刊行の欧文図書を対象に,2020年12月以前のものにも遡及的にリンクを追加した。ただし,「漫画」については,漫画作品が収められる分類記号(NDLC Y16,Y84,NDC726.1)のいずれかが付与されている書誌データのうち,ジャンル・形式用語「漫画」の付与対象に該当するものだけにリンクを追加している。2022年3月までに遡及リンクを行った書誌データは「漫画」が約21万6,000件,「LLブック」が28件である。今後,「児童図書」「議会資料」についても遡及リンクを行う予定である。

  検索語のゆれによる検索もれや検索ノイズのない,資料の的確な検索のために,今後も著作典拠の作成対象の拡大,ジャンル・形式用語の新設,またこれらの典拠のリンク対象資料の拡大などに取り組むことで,Web NDL Authoritiesの更なる拡充を目指したい。

Ref:
Web NDL Authorities.
https://id.ndl.go.jp/auth/ndla
西村葉純. 2021年1月からWeb NDL Authoritiesが変わります. NDL書誌情報ニュースレター. 2020, 2020(4)(55), p. 1-8.
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_11627281_po_2020_4.pdf?contentNo=1
国立国会図書館収集書誌部国内資料課. コラム:ジャンル・形式用語の付与を開始します. NDL書誌情報ニュースレター. 2020, 2020(4)(55), p. 9-12.
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_11627281_po_2020_4.pdf?contentNo=1
日本図書館協会目録委員会. 日本目録規則. 2018年版. 日本図書館協会.
https://www.jla.or.jp/mokuroku/ncr2018
“著作典拠一覧”. Web NDL Authorities.
https://id.ndl.go.jp/information/work/work_list/
収集書誌部収集・書誌調整課. 「国立国会図書館典拠データ検索・提供サービス開発版」公開. カレントアウェアネス-E. 2011, (197), E1198.
https://current.ndl.go.jp/e1198
大原裕子. 「国立国会図書館書誌データ作成・提供計画2021-2025」の取組事項. カレントアウェアネス. 2021, (349), CA2006, p. 17-19.
https://doi.org/10.11501/11727160
髙橋良平. 『日本十進分類法』新訂10版の概要. カレントアウェアネス. 2015, (324), CA1850, p. 11-14.
http://doi.org/10.11501/9396325
渡邊隆弘. 『日本目録規則2018年版』のはじまり:実装に向けて. カレントアウェアネス. 2019, (340), CA1951, p. 12-14.
https://doi.org/10.11501/11299455