E2475 – “GIF IT UP 2021”受賞者インタビュー

カレントアウェアネス-E

No.431 2022.03.03

 

 E2475

“GIF IT UP 2021”受賞者インタビュー

協力:関西館総務課・佐々木良太(ささきりょうた)
編集・聞き手:関西館図書館協力課調査情報係

 

  Europeana(E2183E2278CA1863参照)は,デジタル化された文化遺産をクリエイティブな形で再利用するため,各国の統合ポータルが素材として提供した画像で作成するGIFアニメの国際コンペティション“GIF IT UP”を2013年から毎年開催している。“GIF IT UP 2021”では,国立国会図書館(NDL)職員の佐々木良太が新人賞(First-time GIF-makers Category Winner)を受賞したので,応募の背景,素材の選び方等についてインタビューを行った。

――この度は“GIF IT UP 2021”新人賞受賞,おめでとうございます。受賞された率直なご感想をお聞かせください。

  ありがとうございます。記念受験のような気分で応募したため,非常に驚きました。また,事務局からの受賞のお知らせのメールが,普段受信し慣れない英文でのメールだったため,最初はイタズラメールかと思いました。(笑)

――今回“GIF IT UP 2021”に応募された経緯,また,応募方法についてお聞かせください。

  NDL関西館の第29回資料展示「結構毛だらけネコ本だらけ」(2022年3月15日まで開催中)の準備過程で,国立国会図書館デジタルコレクション(以下「デジコレ」)の画像からネコを探し出し,GIF制作を呼び掛けたら広報効果に繋がらないだろうかと話題になり,本家の“GIF IT UP”に試しに応募してみた,というのが発端です。

  応募方法についてですが,当然のことながらEuropeanaのサイトでは,応募フォーマットやその説明が英語で書かれており,恥ずかしながら外国語が不得手なので,ジャパンサーチ(E2317参照)上の説明を参考にしつつ,Google翻訳や家族に協力してもらいながら記入しました。案の定,応募直前になって,提出作品のファイルサイズに制限(2MB以下)があることに気付き,慌ててファイルサイズを小さくする処置をしました。

  また,受賞作は,12歳で歌川国芳に入門した幕末・明治の浮世絵師である月岡芳年(つきおかよしとし,1839-1892)の『新形三十六怪撰 源頼光土蜘蛛ヲ切ル図』をベースにして作成しました。この作品では,愛嬌のある姿の土蜘蛛と,それに相対する,今にも刀を抜かんとしている源頼光が描かれています。応募フォーマットの中に,作品を説明する欄があるのですが,どう説明するか悩んだ末,「頼光が化物とバトルをしているが,その化物は瞬時に美しい姫へ姿を変える。」という文章を苦しみながら英訳し,記載した記憶があります。

――ジャパンサーチが“GIF IT UP 2021”のコンテンツパートナーとなっており,佐々木さんもそのデータを利用されています。GIFを作成される際に,どのように素材を選定されたのでしょうか。

  素材の選び方についてですが,応募の条件として,作品は,各国の統合ポータルが素材として提供した画像を1つ以上用いる必要があり,和風テイストの作品を作りたいと考えていましたので,ジャパンサーチGIF IT UPのページで紹介されている“錦絵”や“妖怪絵”のカテゴリーから探しました。また,探す中で個人的にデジコレを使い慣れていたため,デジコレから素材を選んでいました。

――作成方法について教えてください。GIF作成の難易度について(これまで作成したことがあるかも含めて)もお聞かせください。

  私の場合,GIFの作成には主にiPadのイラストアプリを使っています。iPadで絵を描くのは子どもも喜ぶため,電車での移動の最中など子どもの気を紛らわすのによく使っており,慣れ親しんでいました。さらに,子どもが動画サイトに夢中になり出した頃に,子ども向けの自主制作のアニメーション動画を一緒に見ているうちに,パラパラ漫画のようなアニメなら描けるのでは?と,GIFアニメ制作にも若干手を出していました。

   “GIF IT UP”に向けたGIF制作の場合は,先に完成された絵があるので,それをどう動かすのかを想像しながら素材を選びます。絵の加工は元の絵を切り貼りして行っています。今回の私の作品の場合,月岡芳年の『新形三十六怪撰 源頼光土蜘蛛ヲ切ル図』では土蜘蛛は体の半分が布のようなもので隠れていたので,更にその布のようなものを動かせば全身を隠せるなと思い,元の絵の愛嬌のある土蜘蛛の表情も相まって,いないいないばぁのような動きを2コマで作れると気づきました。いないいないばぁをする中で,姿が変わると面白いと思ったので,月岡芳年の他の作品から,変化先としてギャップのある女性の絵を選びました。その後,土蜘蛛を切るシーンは,頼光の体の動きを変化させなければなりませんが,細かい絵の加工は難しいので,刀の動きの残像を利用して完成させています。絵の加工は切り貼りですので,絵を描く必要はありませんし,元の素材も提供されているので,絵に自信が無くても気軽に作品作りができると思っています。

――最後に,今回作品を作成されたご感想や,二次利用促進という観点も踏まえたデジタルアーカイブ(DA)の今後についてご意見をお聞かせください。

  これまで述べた通り,絵が描けなかったとしても,元の絵を切り貼りすることでGIFは簡単に作れますので,作成の難易度はみなさんが思うほど高くはないと思っています。とはいえ,関西館の第29回資料展示のTwitter連動企画の中で,デジコレの中から,“ネコ画像を探すもの”『ネコを探しています@デジコレ』と“そこからGIFを制作するもの”『GIFになったネコ』とを呼びかけてみたところ,当然のことながら,ネコ画像を探すものの方が,より多くご参加いただいています。

  DAの二次利用促進という点では,まずはジャパンサーチのような存在を知ってもらうことが先にあり,それを活用してもらったり,楽しんでもらえればと思います。

  GIFに限らず,例えばNDLの『歴史的音源』(E1186,E1366参照)の音源を使った,サンプリング音楽制作というのも楽しいと思いますし,ぜひ今後やってみたいとひそかに考えています。

 


今回の受賞作


Ref:
GIF IT UP.
https://gifitup.net/
“GIF IT UP”. ジャパンサーチ.
https://jpsearch.go.jp/event/gifitup2021
ジャパンサーチ.
https://jpsearch.go.jp/
歴史的音源.
https://rekion.dl.ndl.go.jp/
“第29回 関西館資料展示「結構毛だらけネコ本だらけ」 ”. NDL.
https://www.ndl.go.jp/jp/event/exhibitions/kansai_202202.html
高嶋志帆. 公開10年となるEuropeanaの動向:2018年年次報告書を中心に. カレントアウェアネス-E. 2019, (377), E2183.
https://current.ndl.go.jp/e2183
野村明日香. Europeanaの2020年から2025年の戦略:デジタル変革に力を. カレントアウェアネス-E. 2020, (394), E2278.
https://current.ndl.go.jp/e2278
電子情報部電子情報企画課次世代システム開発研究室. ジャパンサーチ正式版の機能紹介. カレントアウェアネス-E. 2020, (401), E2317.
https://current.ndl.go.jp/e2317
関西館電子図書館課. 国立国会図書館,「歴史的音源」の提供を開始. カレントアウェアネス-E. 2011, (195), E1186.
https://current.ndl.go.jp/e1186
関西館電子図書館課. 「歴史的音源」,国立国会図書館からの図書館送信の嚆矢. カレントアウェアネス-E. 2012, (227), E1366.
https://current.ndl.go.jp/e1366
時実象一. 欧州の文化遺産を統合するEuropeana. カレントアウェアネス. 2015,(326), CA1863, p. 19-25.
https://doi.org/10.11501/9589935