E2317 – ジャパンサーチ正式版の機能紹介

カレントアウェアネス-E

No.401 2020.10.29

 

 E2317

ジャパンサーチ正式版の機能紹介

電子情報部電子情報企画課次世代システム開発研究室

 

   ジャパンサーチは,日本が保有する豊かな文化的・社会的資産であるコンテンツの利活用のため,さまざまな分野のデジタルアーカイブと連携し,そのメタデータを集約して,利活用しやすい形で提供するプラットフォームとなることを目指したサービスである。国立国会図書館は,内閣府知的財産戦略推進事務局が庶務を務めるデジタルアーカイブジャパン推進委員会及び実務者検討委員会で決定される方針のもとで,システム運用と連携調整を担当している。2020年9月末現在,ジャパンサーチは,24機関(つなぎ役)の111データベースと連携しており,合計約2,130万点のメタデータを統合して検索できる。

   以下,2020年8月25日に正式版を公開したジャパンサーチの機能について,試験版(E2176参照)からの改善点を中心に紹介する。

   ジャパンサーチの試験版から引き続き提供している機能としては,キーワードによるメタデータの横断検索やサムネイルの類似画像検索のほか,ジャパンサーチの連携コンテンツを様々な切り口で紹介するギャラリー,お気に入りのコンテンツをブックマークして自分だけのメモをつけて編集できるマイノートがある。また,開発者向けには,Web APIと,構造化された利活用のための標準形式(ジャパンサーチ利活用スキーマ)のメタデータを検索できるSPARQLエンドポイントを提供している。

   正式版公開に当たって試験版から改善した点は,「活用を後押しするための新機能の追加」「ユーザインタフェース(UI)/ユーザエクスペリエンス(UX)の改修」「技術面の刷新」の大きく3点である。

●活用を後押しするための新機能の追加

   新しい機能として,ワークスペース機能とプロジェクト機能を追加した。

   ワークスペースは,連携機関に付与される権限でいくつでも作成することができるページであり,URLとパスワードを知っているメンバー間で,ギャラリーおよびマイノートの共有や同時編集が可能である。この機能を利用することで,ジャパンサーチ内のコンテンツや検索をパーツとして組み合わせたギャラリーやマイノートをブラウザ上で作成することができる。また,複数人が同時並行的に一つのギャラリーやマイノートに対する編集を行うことが可能である。同時に編集しているメンバーが記事内のどの部分を作業しているかリアルタイムに色別に表示されるため,グループでの分担作業に適する。ワークスペースで作成した成果物は,ギャラリーにインポートしてジャパンサーチ上で公開することもできる。

   プロジェクト機能は,ジャパンサーチ本体から切り離された,小さなジャパンサーチを作成できる機能とも言えるものであり,連携機関の権限で作成を可能としている。データベースの登録やギャラリーの作成といった,ジャパンサーチが連携機関向けに提供している機能を全てサポートしている。実験的にさまざまなレベルの内容を取り扱えるよう、プロジェクトで登録したメタデータやギャラリーは,ジャパンサーチ本体の横断検索結果やトップページの一覧画面には表示されないが、一般公開することはできる。また,一般公開せず限定されたメンバーだけで共有することもできる。プロジェクト機能の特色は,所属する連携機関に関係なくメンバーを設定できるため,複数の機関が共同して行う一時的な事業の場として利用できることである。利用ケースとしては,例えば,学術プロジェクトにおいて,共同研究を実施している機関同士が互いのデータを持ち寄って統合する際,データベースやギャラリーの試作等を行う場として用いること等が考えられる。

●UI/UXの改修

   画面デザインの改修を全般的に行っている。改善箇所の例としては,コンテンツの利用条件の表示に関し視認性を高めるデザインとしたことや,検索結果の詳細画面に引用記載例を表示できるボタンを追加したこと,マイノートの編集機能を大幅に拡張したことなどが挙げられる。また,ジャパンサーチ利活用スキーマに対応するようにメタデータの変換を行ったデータベースについては,検索結果の詳細画面に「関連するコンテンツ」の欄を設けた。この欄には,先述のSPARQLエンドポイントを利用し,例えば地域や年代といった項目が共通している資料が自動的に列挙される。キーワード検索以外の要素で類似したコンテンツにアクセスできるようにすることで,ジャパンサーチ内での発見性や回遊性を高める狙いがある。

●技術面の刷新

   UIの設計を改善したことで,読み込みや画面遷移をより高速に行えるようになった。また,正式版公開に合わせて保守運用の効率性を高めるため,ジャパンサーチのサービス全体をパブリッククラウド(Amazon Web Service)からの提供に移行した。

   加えて,画像検索が可能なサムネイル画像が100万点を超えたため,これらを安定して高速に検索し,また検索対象の追加を円滑に行えるよう,正式版から類似画像検索エンジンにvaldを採用している。

   ジャパンサーチは正式版公開によって大きな節目を迎えたが,連携先の拡充や,より幅広い利活用の促進,機能追加とこれからも改善は続く。引き続き,より使いやすくより進化したジャパンサーチを活用してもらえるよう取り組んでいきたい。

Ref:
ジャパンサーチ.
https://jpsearch.go.jp/
“ギャラリー”. ジャパンサーチ.
https://jpsearch.go.jp/gallery
“簡易Web API概説”. ジャパンサーチ.
https://jpsearch.go.jp/static/developer/webapi/
Snorql for Japan Search.
https://jpsearch.go.jp/rdf/sparql/easy/
“vald”. GitHub.
https://github.com/vdaas/vald
国⽴国会図書館電⼦情報部. ジャパンサーチ正式版の機能紹介. 2020, 20p.
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/forum/2020/siryou2.pdf
ジャパンサーチついに正式版公開へ!. 国立国会図書館月報. 2020, (711/712), p. 7-9.
https://doi.org/10.11501/11516814
電子情報部電子情報企画課次世代システム開発研究室. 国の分野横断統合ポータル ジャパンサーチ試験版公開後の動向. カレントアウェアネス-E. 2019, (376), E2176.
https://current.ndl.go.jp/e2176