E2397 – 佛教大学図書館におけるAlma導入の目的と現況

カレントアウェアネス-E

No.415 2021.06.24

 

 E2397

佛教大学図書館におけるAlma導入の目的と現況

佛教大学図書館・飯野勝則(いいのかつのり)

 

 佛教大学図書館は,2020年6月にAlmaの運用を開始した。Almaは図書館サービスプラットフォーム(CA1861参照)のひとつであり,従来の図書館システムにリンクリゾルバや電子リソース管理システムなどの周辺部のシステムを包括したシステムである。クラウド上で提供されることも大きな特徴である。当館でのAlma導入について,2021年1月10日に行われた大学図書館問題研究会(現・大学図書館研究会)関西3地域グループの合同例会では,導入の意図や,さまざまな課題等について,筆者が運用初期段階での報告を行った。本稿においては,これを踏まえたうえで,当初抱いていたAlma導入の目的と,その現況に的を絞りつつ述べるものとしたい。

●導入の目的

 まず,当館がAlmaを採用するにあたって,当館が最も重視した点は,電子コンテンツの管理を効率的かつ合理的に行うことができるということであった。とりわけ,近年では, 試読型選書システムのMediated DDA(Demand Driven Acquisition)やEBA(Evidence Based Acquisition)(CA1777E1310参照)を通じての電子ブック購入が,日常的に行われるようになっていた。このような購入形態の場合,電子ブックはいわゆる冊子の単行書と同様に単品でその都度購入して受入するという流れになり,日頃の業務の中で電子ブックを扱う頻度は格段に増加する。だが,従来の図書館システムや電子リソース管理システムでは,このような電子ブックの発注管理を一貫して行うためのワークフローや機能を備えておらず,システム外での業務が煩雑化していく状況となっていた。それゆえ,電子ブックの発注,受入から管理,利用者への提供までを合理的に行うことのできるAlmaは,予算執行やライセンスの管理に秀で,人的対応の効率化をもたらすものとして,非常に魅力的であった。

 次に重視した点としては,Almaが情報セキュリティマネジメントシステムに関する国際規格ISO27001認証などを受けた,安全かつ堅牢な多機能クラウドサービスであったことである。当館ではこれまで,いわゆる図書館システムや機関リポジトリ,オリジナルデータベース等を学内にサーバを設置するオンプレミス形式で運用してきたが,クラウド上で提供されるAlmaを導入することで,ハード面では必要なサーバ機器の台数が減り,数年に一度の更新作業も軽減されることが期待できた。またソフト面でも,機関リポジトリ等のAlmaへの統合により学内で管理するソフトを減らせることが期待できた。このようなハードやソフトの量的削減への期待のほか,Almaは国外ベンダーの製品であることから,海外の図書館コミュニティ等に対し,日本の学術情報を展開しやすい環境となっていたことも,当館としては国際貢献につながる要素として評価していた。

●現状と課題

 かくして,当館での導入に至ったAlmaであるが,これらの目論見が現在どのような状況にあるかを述べておきたい。

 まず電子コンテンツの管理であるが,コロナ禍で購入が増加した電子ブックへの対応では期待通りの効果をもたらしている。とくにAlmaがいくつかの国外プラットフォームとの間で用意している電子所蔵(Electronic Holdings)の同期機能が与えた影響は大きい。これは,該当のプラットフォームで当館の利用者がアクセスしうる,最新のコンテンツ状況(購入分やオープンアクセスを含む)がAlmaを通して当館のウェブスケールディスカバリーやリンクリゾルバに自動反映されるというもので,これにより正確なアクセスルートを抜けのない形で,利用者に提供できるようになった。なお,電子コンテンツの予算執行やライセンスの管理について,大きな問題は生じていない。

 ハードやソフトの量的削減に関しては現在取り組みを進行中である。機関リポジトリのAlmaへの統合を目指し,機関リポジトリ内のメタデータ項目をAlmaの標準対応スキーマ(MARC21等)のうち該当する項目に当てはめるマッピング作業を進めている。同時に,Almaが持つOAI-PMH(CA1513参照)のプロバイダ機能を利用して,国立情報学研究所(NII)の学術機関リポジトリデータベース(IRDB) が, AlmaのメタデータをJPCOARスキーマで収集できるように,独自のゲートウェイ機能を構築中である。そのほか,日本の学術情報の国外展開への寄与に関しては,AlmaにWorldCatとの連携機能が用意されていることから,日常業務であるAlmaへの書誌登録を通して,WorldCatへの日本語書誌レコードの登録や更新をすることができるようになった。

 運用開始から1年,NACSIS-CATへの書誌レコード登録機能が,未だベンダーの手により開発中の段階であるなど,効率的な運用に至っていない部分も多いが,一方で,当館の目論見は達成の目途が付きつつある。今後もクラウドサービスとして,長期安定運用が可能になるよう,着実に目前の課題を解決していきたい。

Ref:
“大図研関西3地域グループ合同例会「「Alma導入の苦労話を聞こう」―体験者が語る導入のポイントとはー」”. 大学図書館研究会 京都地域グループ. 2021-05-07.
https://www.daitoken.com/kyoto/event/20210110.html
“Alma Cloud-Based Library Services Platform”. Ex Libris.
https://exlibrisgroup.com/ja/alma/
“ProQuest Ebook Central”. 教育と研究の未来. 2020-02-04.
https://mirai.kinokuniya.co.jp/catalog/proquest-ebc/
ISO/IEC 27001:2013.Information technology — Security techniques — Information security management systems — Requirements.
https://www.iso.org/isoiec-27001-information-security.html
“Automatic Upload of Electronic Holdings”. Ex Libris.
https://knowledge.exlibrisgroup.com/Alma/Product_Documentation/010Alma_Online_Help_(English)/Electronic_Resource_Management/020_Working_with_Community_Zone_Electronic_Resources/040Automatic_Upload_of_Electronic_Holdings “ハーベスト仕様”. 学術機関リポジトリデータベースサポート.
https://support.irdb.nii.ac.jp/ja/harvest
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