E2127 – 韓国国立中央図書館のLinked Open Data:国家書誌LOD

カレントアウェアネス-E

No.367 2019.04.18

 

 E2127

韓国国立中央図書館のLinked Open Data:国家書誌LOD

 

●はじめに

    韓国国立中央図書館(NLK)は韓国の全国書誌作成機関として,2013年から全国書誌データをLinked Open Data(LOD)で提供している。なお,韓国では全国書誌を「国家書誌」というため,本稿でもそれにならう。2019年1月10日,それまでのウェブサイトを刷新した新たな国家書誌LOD提供サイトが公開された。本稿では,今回新規に追加された機能だけでなく既存機能も含めて,国家書誌LODの概要を紹介する。
 

●開発経緯

    NLKでは,2011年にLinked Dataの研究開発を開始した。背景には,国の保有する情報を民間に開放して利活用を促進する政府3.0などの動きがあると思われる。また,NLKは国立国会図書館(NDL),中国国家図書館(NLC)とともに日中韓電子図書館イニシアチブ(CJKDLI)に参加し,LODプラットフォームの開発にも携わった(E1885参照)。

    国家書誌LODは2013年にサービスを開始し,以後毎年のように機能を追加するなど改善を続けてきた。2019年1月には,検索窓を中心としたアクセスしやすいデザインに一新され,詳細検索機能を追加するなどの改善が図られている。

●国家書誌LODのデータを探す

    国家書誌LODのサイトでは,書誌(単行書・逐次刊行物・オンライン資料)・記事索引・典拠(著者名・件名)・図書館情報(館種,連絡先等)のデータが合計で約2,200万件(2019年4月時点)提供されている。利用者は,1回の検索で複数種類のデータを得ることができる。例えば「デジタル図書館」で検索すると,関連する書籍の書誌データ,当該分野の著者名典拠データ,「デジタル図書館」の件名典拠データ,「デジタル図書館」の名を持つ図書館の情報を閲覧し,後述するように必要に応じた形式でデータを取得できる。

    また,韓国十進分類法(KDC)を用いた「テーマナビゲーション」を実現している。利用者はKDCの分類階層を手掛かりに,例えば「800 文学」-「810 韓国文学」-「813 小説」のように検索対象を絞りこむことができる。もちろん,それだけでは膨大なデータがヒットするので,その分類に該当するデータを対象に,検索語を指定して結果内検索をする機能がある。

●国家書誌LODのデータを利活用する

   国家書誌LODのデータはすべてRDF形式で提供される。合わせて,KORMARCやMODSといった従来のデータ形式も利用可能である。検索結果のデータを個別に取得するだけではなく,利用者のニーズに合うデータをまとめて入手しやすくするため,SPARQLやOpenAPIなどの使用方法の詳細なガイドも提供している。ガイドに従ってAPIのコードを作成したりSPARQLのクエリを試したりすることで,NLKのサービスを他のサービスと組み合わせ,新たなサービスを創造するよう利用者に促している。

    また,展示図録や視聴覚資料といった一定条件に合致するデータのセットを,「データコレクション」として提供している。コレクションの種類は今のところ多くはないものの,ダウンロードの形式はJSON,RDF/XML,Turtleなどである。

    韓国では,2013年制定の「公共データの提供と利用活性化に関する法律」により,商用目的を含めて公共機関が保有するデータの自由な利活用が進められている。今後,予め用意されたデータコレクションに限らず,利用者が自由な発想で国家書誌のデータを取得し,あるいは他機関のデータとも統合して,様々なウェブサービスを展開していくことが期待できる。

●チャットボット LODi

    国家書誌LODのサイトを訪れると,どの画面にも小さなロボット型のキャラクターが出てきて挨拶をしてくれる。LODi(ロディ)という名のチャットボットで,運用試行中である。まだ予め想定された範囲の限定的な質問に答える程度のようだが,今後,利用者との応答を蓄積し分析して,より正確な情報提供サービスにつなげる計画とのことである。ちなみに本稿執筆中(2月中旬),試しに「国家書誌LODとは?」「SPARQLとは?」とLODiに尋ねたところ「よくわかりません」「もう少し勉強してからお答えしますね」との答えが返ってきた。LODi君の今後の成長が楽しみである。
 

●むすび

    NLKはNDLと同様バーチャル国際典拠ファイル(VIAF)に典拠データを提供しており,VIAFを介してNDLの典拠データとも連携できる。また,件名データの一部には米国議会図書館件名標目表(LCSH)のIDに加えてNDLの件名典拠IDも記録されており,国家書誌LODのサイトからWeb NDL Authoritiesにリンクしている。NDLも2014年からIDによるLCSHとのリンクを進めているが,NLKの取組みにより国を超えたデータ連携がますます充実している。NDLもこれまでの成果に満足せず,さらに国内的・国際的な連携の拡充に向けて努力していきたい。

    余談だが,NDLの書誌情報提供サービスにも広報犬のキャラクター「カーネ」がいて,『NDL書誌情報ニュースレター』『国立国会図書館月報』に登場しては書誌や典拠について学んでいる。チャットボットのように賢くはないが,愛嬌ならLODi君といい勝負であろう。NLKとNDLは毎年,職員が相互に訪問する日韓業務交流を行っているが,人の交流に加えウェブ上での日韓(「推しキャラ」ならぬ)「書誌キャラ」交流も,いつの日か実現させてみたい。

収集書誌部国内資料課・清水悦子

Ref:
https://lod.nl.go.kr/
http://www.nl.go.kr/nl/commu/libnews/article_view.jsp?board_no=9930&notice_type_code=3&cate_no=4
http://www.law.go.kr/LSW/lsInfoP.do?lsiSeq=142444#0000
https://www.ndl.go.jp/jp/data/bib_newsletter/2016_1/article_02.html
https://www.ndl.go.jp/jp/data/bib_newsletter/2017_1/article_07.html
http://www.ndl.go.jp/jp/data/basic_policy/article/index.html
https://doi.org/10.11501/9578225
E1885