E1904 – 第13回レファレンス協同データベース事業フォーラム<報告>

カレントアウェアネス-E

No.323 2017.04.13

 

 E1904

第13回レファレンス協同データベース事業フォーラム<報告>

 

 2017年2月17日,第13回レファレンス協同データベース(レファ協)事業フォーラムが国立国会図書館(NDL)関西館で開催された。本フォーラムは,レファ協に関心を持つ人々を対象に,専門家の講演,参加館の実践報告等を通じて事業への認識を深め,あわせて関係者相互の情報交換,交流の場とすることを目的として2004年度から毎年度開催されている。

 今回は「レファ協にデジタル情報資源を活用しよう ~ローカルからグローバルまで」をテーマに,現代の生活に身近なものとなったデジタル情報資源を,図書館でのレファレンスやレファ協においてどのように活用していくかが検討された。

 はじめにNDL関西館電子図書館課の辰巳公一から,国立国会図書館デジタルコレクション及び図書館向けデジタル化資料送信サービスについて,その概要やレファレンスにおける活用例等が報告された。

 続いて事例報告として,自館でデジタル情報資源を公開または利用している図書館員4名から,それらのデジタル情報資源の概要と,レファレンスへの活用について報告がなされた。神戸大学附属図書館の菊池一長氏からは「新聞記事文庫」について,豊中市立高川図書館の西口光夫氏からは「北摂アーカイブス」について,北海道立図書館の海藤久仁子氏からは「北方資料デジタル・ライブラリー」について,レファ協に登録されたレファレンスの実例も交えながら,それぞれの特長やレファレンスにおける活用法が紹介された。日本貿易振興機構アジア経済研究所図書館の坂井華奈子氏からは,同館でレファレンスによく利用される国際機関のウェブサイト等について,利用にあたっての留意点や検索方法,活用例が紹介された。

 その後,レファ協事務局による2016年度事業報告を挟み,パネルディスカッション「レファ協にデジタル情報資源を活用しよう ~ローカルからグローバルまで」が行われた。羽衣国際大学の谷本達哉氏をコーディネーターに迎え,事例報告者4名がパネリストとなった。

 デジタル情報資源の図書館における全般的な活用法について,海藤氏からは,大人も子供も視覚的に理解できるという画像の特長を生かした講演会が提案された。坂井氏からは,レファレンスにおいて紹介できる情報として,大学の教員や学生向けには機関リポジトリで公開している研究成果があること,新興国でのビジネス進出等を検討している利用者にはオンライン統計等が役立つことが挙げられた。

 レファレンスには新聞記事が有用な情報源となるものも多いことから,全文検索が可能な「新聞記事文庫」に関心が多く寄せられた。西口氏からは,豊中市でも市関連の新聞記事を切り抜いてデジタル化し,見出しを検索可能にしていることが紹介された。坂井氏からは,インドでも新聞クリッピングがなされており,内部向けにデジタル化されているものもあるという例が紹介されたほか,全文検索には大きなメリットがある一方で,適切な情報を探し出すには知識や経験を必要とすることから図書館員のノウハウは依然として求められること,レファ協への登録がそうしたノウハウの共有につながり得ることが指摘された。

 レファ協の利用法に関しては,パネリスト全員から,他館の事例を参照することのメリットが述べられた。具体的には,他館の回答プロセスから自館の調査へのヒントが得られる点,デジタル情報資源がどのように使われているかを知ることができる点,等である。また複数の館で,レファ協に事例を登録する際にデジタル情報資源のURLを記入していることが紹介された。デジタル情報資源をいかにレファ協の枠組みに取り込んでいくかについては,レファ協登録データのカテゴリーの一つである「特別コレクション」への登録が複数のパネリストから提案された。

 会場からの質問は質問票の形で受け付け,一部はパネルディスカッションのなかで紹介された。紹介された質問としては,北摂アーカイブスについて,市民や自治体から提供されるデータをどのように管理しているか,同アーカイブスと地域住民の談話を組み合わせた学校での活動と関連して,学校と地域の連携はどのようになされているか,があった。

 最後に谷本氏からまとめとして,二点が挙げられた。第一は,現在の図書館のレファレンス・情報サービスにはデジタル情報資源が必要であり,従来の参考図書などの情報源に加え,有用なデジタル情報資源を用いてサービスを提供していくことが求められる,という点である。第二は,レファ協という枠組みにどのようにしてデジタル情報資源を取り入れ,海外からの利用も含めて活用していくかが課題となるという点である。現在はレファレンス事例が登録データの大半を占めるが,特別コレクションにデジタル情報資源や紙媒体等のコレクションを登録していくことで,それらの所在情報等の二次情報がレファ協へ蓄積されていき,海外から見た際にもより有用なデジタル情報資源となり得ることが示唆された。

関西館図書館協力課・レファレンス協同データベース事業事務局

Ref:
http://crd.ndl.go.jp/jp/library/forum_13.html
https://togetter.com/li/1082084
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/sinbun/
http://e-library2.gprime.jp/lib_city_toyonaka/cms/
http://www3.library.pref.hokkaido.jp/digitallibrary/
http://d-arch.ide.go.jp/asia_archive/