カレントアウェアネス-E
No.209 2012.02.09
E1258
東日本大震災アーカイブ国際合同シンポジウム<報告>
2012年1月11日,仙台国際センターにおいて「『東日本大震災アーカイブの最前線と国境・世代を超えた挑戦』~東日本大震災アーカイブ国際合同シンポジウム~」と題するシンポジウムが,ハーバード大学,東北大学防災科学研究拠点,東北大学附属図書館,総務省の主催によって開催され,筆者を含め約250名の参加があった。
シンポジウムでは,まず,東日本大震災アーカイブに関する取組みを行っている官・民・学及び被災地の機関等からそれぞれの取組みについて報告があり,その後登壇者全員によるパネルディスカッションが行われた。
各機関等からの報告では,官・民からの報告として国立国会図書館(NDL)・総務省・Yahoo! JAPAN・saveMLAK・Internet Archive,学からの報告として防災科学技術研究所・東北大学・ハーバード大学,被災地からの報告として河北新報社・せんだいメディアテーク・宮城県図書館・岩手県立図書館・東北大学附属図書館・福島イノベーションセンターより,それぞれ報告があった。途中,神戸大学附属図書館の稲葉洋子氏より特別講演として,阪神・淡路大震災に関する「震災文庫」の取組みについて報告があった。
各機関からの報告資料は,後日,東北大学アーカイブプロジェクト「みちのく震録伝」のウェブページに掲載される予定である。
パネルディスカッションでは,記録の収集・整理・保存・活用,各プロジェクト同士の連携・協力,アーカイブの取組みの継続・継承等をテーマに活発な意見交換が行われた。その中で「記録の寄贈や投稿をする際に,どの機関に対してすべきかがわかるよう国等で交通整理をする必要がある」,「記録を作成・発掘する現場に人と予算の手当が不足していることが大きな課題である」,「著作権や肖像権等により,データの二次利用が円滑に行えないことが課題である」,「デジタル情報だけでなく,現物資料も保存することが重要である」,「テレビ・ラジオ番組も貴重な資料であり,アーカイブする必要がある」といった意見が出された。
また,今後の展望については「アーカイブの重要性が認識されはじめた。機運を一時的なものにしてはならない。東日本大震災アーカイブの取組みを機に,日本全国に記録の保存の重要性を訴えていく必要がある」,「日本国内に留まらず,国際展開も視野に入れるべきである」といった意見が出された。
このシンポジウムは,東日本大震災アーカイブに関する取組みを行っている国内外の関係者が一堂に会する貴重な機会であった。東日本大震災に関する記録・教訓を次の世代へ確実に継承していけるよう,今後,関係機関同士で最適な連携・協力・役割分担を行うことが望まれる。
(電子情報部電子情報サービス課・白石 啓)
Ref:
http://www.dcrc.tohoku.ac.jp/archive/events/sympo201201.html
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/eqb/
http://togetter.com/li/239970