E1221 – 第22回日本資料専門家欧州協会(EAJRS)年次大会<報告>

カレントアウェアネス-E

No.201 2011.09.29

 

 E1221

第22回日本資料専門家欧州協会(EAJRS)年次大会<報告>

 

 2011年9月7日から10日まで,日本資料専門家欧州協会(European Association of Japanese Resource Specialists:EAJRS;CA1463E031参照)第22回年次大会が,英国のニューカッスル大学で開催された。

 EAJRSは欧州における日本分野の資料(図書館資料・情報資源)に関心を持つ専門家によるグループであり,司書,研究者,情報専門家等がその活動に加わっている。欧州内及び日欧間でのネットワーク作り・情報共有・活動の連携を目指して,毎年9月頃に年次大会が行われている。今年は11か国から74人が参加した。うち,日本からは筆者や国立国会図書館(NDL)職員ら28人,北米からも4人の参加があった。

 NDLからは,東日本大震災によるNDLを含めた国内図書館の被害と復興の状況について報告があった。北米の参加者からは,北米日本研究図書館資料調整協議会(NCC;CA1462参照)が2012年3月にトロントで開催する若手日本研究司書向けの研修プログラムについての案内が,また2011年2月に東京で行なわれた日本専門家ワークショップの参加者からは,その報告が行なわれた。日本のデータベース会社等からも参加があり,機能やコンテンツのプレゼンテーションが行なわれた。

 欧州所在の日本資料の例として,スコットランド国立博物館のバックランド(Rosina Buckland)氏による“Japanese Art in Edinburgh Collections”という発表では,エジンバラ市立図書館所蔵の「吾妻遊図」や保元物語・平治物語の奈良絵本が紹介された。いずれも色彩が鮮明なだけでなく,保存状態が非常によく,会場から感嘆の声があがった。リーズ大学のティニオス(Ellis Tinios)氏からは近世資料について,ロンドン大学のガーストル(Andrew Gerstle)氏からは艶本資料について発表があった。内容そのものは日本資料とその研究についてであったが,日本からのデジタル画像のインターネット公開,日英での共同研究プロジェクトなど,国を越えての協力体制がそれらの研究を支えており,その重要性を再認識させられた。

 また,NACSIS-CATワークショップも行われた。これは欧州でNACSIS-CATに接続し目録登録を行っている参加者を対象に,実例を挙げながら目録規則や書誌調整等の実際について解説する上級者向けのワークショップである。講師は,2011年5月に国立情報学研究所(NII)で講師となるための研修を受けた英国の司書2人が担当した。この2人は今後欧州各地へ講師として派遣されていく予定とのことである。

 会期中には,ニューカッスル大学図書館見学のほか,市内のレイン・アート・ギャラリーやダラム市のダラム大学東洋美術館での日本・東洋美術作品の鑑賞会も行われた。最終日の総会で,次回の開催地をベルリンとすること等が決定・報告され,会は閉幕した。

(国際日本文化研究センター・江上敏哲)

Ref:
http://eajrs.net/2011conferenceprogramme
http://www.nccjapan.org/
CA1462
CA1463
E031