E1220 – 英国RLUKの2014年までの戦略計画と学術雑誌価格高騰への対応

カレントアウェアネス-E

No.201 2011.09.29

 

 E1220

英国RLUKの2014年までの戦略計画と学術雑誌価格高騰への対応

 

 2011年8月に,英国研究図書館コンソーシアム(RLUK)は,2011-2014年の戦略計画“The Power of Knowledge, Phase 2”を公開した。“Phase 2”となっているのは,2008-2011年の同名の戦略計画との継続性が意識されているためである。

 RLUKは,英国及びアイルランドの30の研究図書館からなる組織で,大学図書館だけでなく,英国図書館やスコットランド国立図書館,ウェールズ国立図書館等も参加している。RLUKの関わる活動としては,加盟館の総合目録COPACや英国のアーカイブズ資料のゲートウェイサイトArchives Hub等のサービスとともに,紙媒体雑誌の共同管理による書庫スペースの有効活用を目的とするUK Research Reserve(UKRR),学術雑誌購読料の高騰に対する取組み,国レベルでのオープンなメタデータインフラを構築するための“Discovery”プロジェクト(E1067参照)等のプロジェクトを実施している。また,研究事業として,研究図書館の価値についての報告書作成(E1171参照)や,将来の図書館像についての調査等を実施している。

 2011-2014年の戦略計画では,(1)研究図書館のモデルの再定義,(2)コスト削減と質の向上のための協同,(3)倫理的かつ効果的な学術出版の実現,(4)他にない独自性のあるコレクションの宣伝,(5)研究データ管理における図書館の役割のモデルの提示,の5点が目標として設定されている。

 (1)では,財政状況の変化を踏まえ,研究者支援,スペース活用,蔵書構築等について,他領域からの知見も活用しながら新たな全体像を示すこと等が挙げられている。(2)では,COPACやUKRR等の経験を踏まえ,国内外の機関との連携により,コスト削減やサービス改善に結びつけるとしている。(3)では,電子ジャーナル費用の削減に向けた取り組みとともに,オープンアクセスの推進を掲げている。(4)では,各館のコレクションの持つ研究資源としての価値をアピールするための活動を,特にデジタル人文学の分野に注力して行うとし,共同デジタル化のビジネスモデルを示すとしている。(5)では,オープンデータや共同データセット等の学術コミュニケーションにおける新たな流れを考慮しながら,研究データ管理における役割を理解することが重要であるとしている。

 電子ジャーナルの価格に関しては,RLUKは2010年11月の声明において,出版社が価格を下げない限り今後はビッグディール(多数のタイトルの一括契約)を支持しないという姿勢を示している。また,2011年7月には,RLUK加盟館向けのワークショップで,ビッグディールの費用対効果を判定するツールを発表している。これは,各ジャーナルの価格情報と利用情報を使い,タイトル単位の購入と文献提供サービスを組み合わせた場合の費用をビッグディールの費用と比較するもので,プレスリリースでは,サンプル調査の結果からはタイトル単位の購入のほうが安上がりになる可能性があると指摘している。

Ref:
http://www.rluk.ac.uk/files/RLUK%20Strategic%20Plan-%202011%20-%202014.pdf
http://www.rluk.ac.uk/content/rluk-calls-journal-pricing-restraint
http://www.rluk.ac.uk/content/press-release-rluk-develops-journal-subscription-analysis-tool
http://www.libraryjournal.com/lj/newsletters/newsletterbucketacademicnewswire/891432-440/british_research_libraries_draw_line.html.csp
http://www.infotoday.com/IT/sep11/The-Big-Deal-Not-Price-But-Cost.shtml