E1170 – デジタル情報保存プログラムNDIIPP,設立から10年の報告書

カレントアウェアネス-E

No.192 2011.04.28

 

 E1170

デジタル情報保存プログラムNDIIPP,設立から10年の報告書

 

 2011年3月8日に,米国議会図書館(LC)が主導している「全米デジタル情報基盤整備・保存プログラム」(NDIIPP;CA1502参照)の2010年版の報告書が公表された。NDIIPPが設立された2000年からの10年間における活動と,今後の計画等を示したものである。報告書の要約部分から,その概要を紹介する。

 NDIIPPの主要な目標は,(1) 全米の保存ネットワークの形成,(2) 全米規模のコレクションの形成,(3) 保存のための技術的プラットフォームの構築,(4) 著作権問題や保存活動促進のための公共政策,の4つとされている。

 これらの4つの目標に関して10年間の活動から判明した点として,(1) については,共同活動や会議等を通じて自然発生的にネットワークが形成されること,(2) については,コンテンツは本来の領域を超えて共有されることでその価値が増すこと,等が挙げられている。(3) については,地理的・組織的に分散してコピーを重複して保持する方がよいことや,一つの問題に対して複数のアプローチを行う方がよいこと等が挙げられている。(4) については,保存活動の妨げとなっている著作権制度をデジタル時代に対応したものに改正する必要があることや,現状では個人や企業にとって保存のための経済的インセンティブがほとんどないこと等を指摘している。

 今後は,これまでの実績に基づき,全米規模のデジタルコレクションへの長期的なアクセスを提供するための基盤を構築するとし,その取組みを4つに分けて説明している。

 1つ目は,デジタル資料の保存活動のための全米規模の連合“National Digital Stewardship Alliance”(NDSA)を正式化することである。NDSAの役割として,全米規模のデジタルコレクションの構築,参加機関間での協同の促進,有用なサービス・標準・ビジネスモデル等の開発・維持,技術的インフラの開発促進,保存に関する研究開発,デジタル資料の長期保存を支援する社会的環境の整備,が挙げられている。

 2つ目は,全米規模のデジタルコレクションの枠組みを形成することである。コレクションは,教育・研究・文化遺産・公共政策等の幅広い分野をカバーするものとされ,2010年から2013年にかけて重点的に整備する分野として,政府・政治・法律,地図・地理,メディア・ジャーナリズム,の3分野が示されている。

 3つ目は,NDSAの参加機関に技術的支援を行うための団体の設立を検討することである。その団体の機能は,技術的研究開発を財政的に支援すること,ストレージ等の基盤サービスの仲介役となること,民間から資金を集め官民の連携を仲立ちすること,とされている。

 4つ目は,デジタル保存を促進するような公共政策面での取組みである。まず,著作権法第108条研究会による著作権法改正のための提言(CA1604,E778参照)の実現のために米国著作権局と連邦議会に働きかけることが挙げられている。あわせて,税制関連のインセンティブについての研究会の設立や,著作権者と協議の上で著作権保護期間中の作品の表示・発信についての試験的取組みを行うことについても取り上げられている。

 報告書の付録部分には,提携プロジェクト,デジタル保存のためのツール,提携機関のコレクションの一覧や,今後の戦略についての文書等が掲載されている。

Ref:
http://www.digitalpreservation.gov/news/2011/20110308_news_ndiipp_report.html
CA1502
CA1604
E778