E778 – LCの108条研究グループ,著作権制限規定の検討報告書を公表

カレントアウェアネス-E

No.127 2008.05.14

 

 E778

LCの108条研究グループ,著作権制限規定の検討報告書を公表

 

 デジタル技術の進展に伴い,著作物の創作・流通・利用,および図書館や文書館,博物館における保存のあり方に変化が生じている。このような背景のもと,米国では2005年4月から,図書館に関する著作権法の権利制限規定の見直しに向けて,米国議会図書館(LC)は「108条研究グループ(Section 108 Study Group)」を設置,審議を進めていた(CA1604参照)。2008年3月31日,108条研究グループは報告書“The Section 108 Study Group Report”をまとめ,LCのビリントン(James Billington)館長に提出 した。なお「108条」とは図書館・文書館に関する権利制限を定めた米国著作権法の条文である(17 USC. Sec.108)。

 本報告書が取り上げている「法改正に向けた勧告」は,多岐にわたる。プレス・リリースでは一例として,下記の内容を取り上げている。

  • 108条による権利制限対象機関に「博物館」を追加するほか,外部の業務受託者も一定の要件の下,権利制限対象機関とする。
  • 危機に瀕した公表著作物が「損傷」や「消失」する前に,特定の図書館や博物館で,保存用複製物を作成できる新たな例外規定を108条に追加する。このような保存用複製物の利用は,制限されるべきである。
  • 一般公開されているウェブサイトやオンラインのコンテンツについて,図書館や文書館が保存目的で収集・複製したり,その複製物を私的な研究・調査を目的とする利用者に提供することができるように,新たな例外規定を108条に追加する。この規定に対して,権利者は収集を認めるかどうかの権利を,行使可能とする。
  • 図書館や文書館には,唯一の資料の代替として,もしくは保存用としての複製物を,現在の規定では3部作成することが認められているが,それを合理的に必要な範囲で,一定限度の部数まで作成を認めるよう変更する。
  • この変更により図書館は他の手段を含めて,デジタルコンテンツをより安全に保存することが可能となる。

 本報告書は今後予定されている,著作権法改正案起草に際しての基礎資料となる予定である。

Ref:
http://www.loc.gov/today/pr/2008/08-063.html
http://section108.gov/docs/Sec108StudyGroupReport.pdf
http://section108.gov/
CA1604