E791 – IFLA,多文化図書館宣言を制定

カレントアウェアネス-E

No.128 2008.05.28

 

 E791

IFLA,多文化図書館宣言を制定

 

 国際図書館連盟(IFLA)は,「IFLA多文化図書館宣言」を制定し,2008年4月からウェブサイト“IFLANET”で公表している。この宣言は,多文化社会における図書館の原則や使命を示したもので,文化・言語的多様性を人類共通の財産として尊重し,情報・知識を提供するサービスなどを通じて,その維持,促進に努めるとともに,異文化間の対話を活発にし,相互理解のある市民性を育むことを,全ての図書館に対し求めるものである。

 宣言は,(1)原則,(2)図書館の多文化サービスの使命,(3)管理と運営,(4)コア活動,(5)スタッフ,(6)財政・法令・ネットワーク,(7)宣言の履行, から成っている。

 (1)では,グローバル社会に生きる個人はすべて,あらゆる図書館・情報サービスを利用する権利を有する,という大原則を確認したうえで,文化的・言語的多様性に取り組む際の図書館の原則として,「差別することなく,コミュニティの全ての構成員に奉仕すること」「適切な言語と文字で情報を提供すること」「全てのコミュニティと全てのニーズを反映して,様々な資料とサービスへのアクセスを提供すること」「コミュニティの多様性を考慮してスタッフを雇用すること」を挙げている。

 (2)では,多文化社会における図書館にとって核となる使命について,10項目に渡って述べている。例えば,「文化的多様性への肯定的な価値認識を育み,文化間対話を促進する」「あらゆる文化的バックグラウンドを持った人や集団の,社会への包摂と参加を支持する」「デジタル時代に対応した情報リテラシーを促進する」「電子空間への普遍的アクセスを促進する」ということであり,すべて,情報,リテラシー,教育,文化と関連の深いものとなっている。

 (3)から(7)では,原則に則り使命を果たすために必要な,図書館サービス・資料収集の方針,利用者教育,スタッフ育成,政府など意思決定機関による法整備や資金援助など,より具体的な項目について,望ましいあり方を述べている。

 この宣言は,2006年8月に,IFLAの中央執行機関である運営理事会で承認され,国連教育科学文化機関(UNESCO)が推進している,情報と知識への普遍的なアクセスの実現を目指す“Information for All Programme(IFAP)”(CA1566参照)の政府間協議会でも承認されている。今後,2008年中に開催されるUNESCOの第35回総会へ検討の場を移し,この総会での承認を目指すということである。

Ref:
http://www.ifla.org/VII/s32/pub/MulticulturalLibraryManifesto.pdf
CA939
CA1566
E001
E003