元学校図書館メディアスペシャリストが作成したハリーポッター用語集サイト“Harry Potter Lexicon”の書籍化に関して、原作者のローリング(J. K. Rowling)氏と映画の配給会社ワーナーブラザーズ社が著作権侵害であると訴えていた米国での裁判について、北米研究図書館協会(ARL)と米国図書館協会(ALA)が共同で、この裁判の判決においてフェアユース(公正使用)の概念がどのように扱われたかを分析するレポートを発表しています。
この裁判の判決では、書籍化は著作権侵害にあたるとして、出版差止と、6,750ドル(約70万円)の損害賠償の支払が命じられました。しかしながら、この判決を分析した結果、
・ハリーポッターの各書籍から用語集、レファレンス・ガイドを作成するという行為そのものは、(学術的な注釈・批判等を付していなくても)フェアユースにあたると認められている。
・問題とされたのは、この著者(元学校図書館メディアスペシャリスト)が、必要と見なされる範囲を超えて、オリジナルの書籍から引用している点にある。とりわけ、ローリング氏自身が先に(筆名で)執筆・出版しているハリーポッターの解説書(邦題『幻の動物とその生息地』『クィディッチ今昔』)と同じ内容になっている部分がある。
ということで、フェアユース概念は死んではおらず司法によって適切に運用されているとしながら、著作権侵害とされることなく文学作品のレファレンス・ガイドを作成するプロセスが明確になったことを評価しています。
How Fair Use Prevailed in the Harry Potter Case
http://www.arl.org/bm~doc/harrypotterrev2.pdf
How Fair Use Prevailed in the Harry Potter Case: ARL & ALA Release Copyright Analysis
http://www.arl.org/news/pr/harry-potter-13oct08.shtml
参考:
学校図書館メディアスペシャリストが作ったハリーポッター本、発売禁止に
http://current.ndl.go.jp/node/8779