Knowledge Rights 21(KR21)、電子書籍と電子貸出に関する声明を発表

2022年5月17日、Knowledge Rights 21(KR21)が、電子書籍と電子貸出に関する声明を発表しました。KR21はアルカディア基金の資金提供を受けて欧州における著作権とオープンアクセスの改革を提唱するプロジェクトです。

声明では、電子書籍の運用が、図書館が物理的な書籍を収集・貸出・保存することを認める現行の著作権法の枠外でなされているとしています。販売拒否、エンバーゴ、高価格、制限的なライセンス条件といった商業出版社による独占的な行動によって、図書館がコレクション構築やコレクションへのアクセス提供といった従来の使命を果たすことが難しくなってきていると指摘しています。

欧州では、電子貸出は従来の物理的な書籍の貸出と同様に処理されるべきとした欧州連合(EU)司法裁判所による判決があるものの、これを国内法で規定するための具体的行動を取った国はないとし、各国政府による既存の図書館法の見直しや、EUによる貸出・貸与指令の更新を提案しています。

A Position Statement from Knowledge Rights 21 on eBooks and eLending(KR21, 2022/5/17)
https://www.knowledgerights21.org/news-story/ebooks-statement/
https://www.knowledgerights21.org/wp-content/uploads/2022/05/eBookPositionPaper150522.pdf
※2つ目のリンクは声明本体[PDF:9ページ]です。

参考:
情報機関による教育・研究目的での著作物への無制限のアクセスを可能とする著作権法や実務の改革の達成・実行を目的とした欧州での3年間のプログラム“Knowledge Rights 21(KR21)”が開始
Posted 2021年9月27日
https://current.ndl.go.jp/node/44876

CA1979 – 動向レビュー:欧州の図書館と電子書籍-従来の公共図書館よ、安らかに眠れ? / ベンジャミン・ワイト,井上靖代(翻訳)
カレントアウェアネス No.344 2020年6月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1979

CA2011 – 動向レビュー:電子書籍を中心とした公貸権制度の2005年以降の国際動向 / 稲垣行子
カレントアウェアネス No.350 2021年12月20日
https://current.ndl.go.jp/ca2011

CA1579 – 動向レビュー:公共貸与権をめぐる国際動向 / 南亮一
カレントアウェアネス No.286 2005.12.20
https://current.ndl.go.jp/ca1579