ウクライナの文化遺産保護のための動き(記事紹介)

2022年3月4日、国際文化財保存学会(IIC)は、ニュース記事“How Ukraine is moving to protect its cultural heritage”を公開しました。記事では、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、博物館や労働者の生命を守るために文化遺産コミュニティが行っていることの概要が紹介されています。

記事ではまず、米・ニューヨークタイムズ紙の記事に触れ、博物館が紛争の開始に驚かされたことが述べられています。貴重なものを避難させることを検討した時点で、すでに道路が難民で溢れていたとの証言が取り上げられています。よって、多くは地下室にものを移動させています。また、ウクライナ国立博物館館館長からの手紙で、特定の優先順位でものを取り下げて隠すという武力紛争の際に博物館が行うことについてはソビエト時代に確立された指示があるが、時間とリソースが不足している中での実施に課題があるとされたことが触れられています。

被害として、イヴァンキフ郷土史博物館、バビ・ヤール・ホロコースト・メモリアルなどが焼失などの被害にあっていることが述べられています。また、略奪の懸念についても指摘されています。

東ヨーロッパの博物館や文化団体からの反応として、博物館と国際博物館会議(ICOM)ポーランドが、人々の避難所やコレクションの退避などの手配を行っていることが触れられています。

IICは、ネットワークを利用して、課題の解決の支援などの方策を模索しているとしています。例として、戦争などにより避難した修復家への支援、追放された研究者のためのタスクフォースの設置、オンラインでのウクライナの文化遺産保存(Saving Ukrainian Cultural Heritage Online, SUCHO)、文化遺産の保存のための基金などが挙げられています。

How Ukraine is moving to protect its cultural heritage(IIC, 2022/3/4)
https://www.iiconservation.org/content/how-ukraine-moving-protect-its-cultural-heritage

参考:
国際博物館会議(ICOM)、ロシアによるウクライナへの侵攻に関する声明を発表
Posted 2022年2月25日
https://current.ndl.go.jp/node/45686

ブルーシールド、ウクライナの文化財保護に関する声明を公表
Posted 2014年2月28日
https://current.ndl.go.jp/node/25584

ウクライナの文化遺産関係機関のオンライン上のデータを保存するプロジェクトが実施中
Posted 2022年3月8日
https://current.ndl.go.jp/node/45738