2021年9月5日付で、公平性・社会正義・情報に関するオープンアクセスのオンラインジャーナル“The International Journal of Information, Diversity, & Inclusion”のVOL.5 NO.3において、カナダ・ヨーク大学の図書館員Norda Bell氏による論文“An Exploratory Study of Diversity Statements in Canadian Academic Librarian Job Advertisements”が公開されました。
同氏は、2018年の1年間にカナダ・トロント大学が公開する求人広告ウェブサイトに掲載された、カナダの大学における図書館員・アーキビストの求人広告50件を対象に、多様性に関する言及について調査を行いました。論文では、調査の結果、全体で48件、対象の内の北米研究図書館協会(ARL)参加館の求人広告全て(29件)で多様性に言及していたことが述べられています。また、記載の内容について以下の4タイプに分けられると示しています。
・タイプ1「決まり文句(boilerplate)」:多様性・公平性に関する一般的な記述のみ(合計4件)
・タイプ2「雇用機会均等(employment equity)」:女性、先住民族、ビジブル・マイノリティ(カナダにおける欧州系以外の民族)、障害者の採用に言及(合計4件)
・タイプ3「多様性(diversity)」:タイプ2で挙げた集団に加え、LGBTQ+等その他のアイデンティティ集団の採用にも言及(合計9件)
・タイプ4「拡張した多様性管理(Expanded Diversity Management)」:タイプ2で挙げた集団に加え、そのほかの社会集団の採用に言及し、個人・人口統計学上の特徴を超えた形での多様性を歓迎する(合計31件)
その他、今回の調査結果では、従来通りの女性、先住民族、ビジブル・マイノリティ、障害者への言及だけでなく、LGBTQ+をはじめとしたその他の集団への言及も多く、公平性の遵守モデル(タイプ2)から、法的要件を超えた集団・アイデンティティを含む多様性型モデル(タイプ3・4)への移行が見られること等を指摘しています。
Norda A. Bell. An Exploratory Study of Diversity Statements in Canadian Academic Librarian Job Advertisements. The International Journal of Information, Diversity, & Inclusion. 2021, Vol.5, No.3, p.152-173.
https://doi.org/10.33137/ijidi.v5i3.36202
参考:
コロナ禍での米国の図書館員の労働市場(記事紹介)
Posted 2021年5月11日
https://current.ndl.go.jp/node/43958
米国の大学図書館のデジタル人文学に関する求人広告の内容分析(文献紹介)
Posted 2020年12月4日
https://current.ndl.go.jp/node/42692