ジャーナル指標に基づいて金銭的報酬が提供されている論文の引用への影響(文献紹介)

2021年4月27日付で、Springer Nature社が刊行する科学計量学分野の査読誌“Scientometrics”に、ルーマニアのNational University of Political Studies and Public AdministrationのGabriel-Alexandru Vîiu氏とMihai Păunescu氏による共著論文“The citation impact of articles from which authors gained monetary rewards based on journal metrics”が掲載されています。本文は有料ですが、要旨(Abstract)は公開されています。

研究の促進を目的として、論文の出版に応じて個別の著者に金銭的報酬を与えるという政策手段があります。論文では、ルーマニアの報酬プログラムRomanian Program for Rewarding Research Results(PR3)を事例として、著者が報酬を受け取っている約1万報の論文の被引用数について評価を行っています。PR3ではジャーナル単位の指標を利用して、金銭的報酬の割り当てが行われています。

190万報の論文の引用データセットを利用して評価を行った結果、同一ジャーナル内では、報酬を受け取った論文の被引用数は、全範囲にほぼ均一に分布していると述べています。より広い範囲で評価を行った結果、報酬を受け取った論文の約3分の2が世界平均の被引用数を下回り、3分の1以上が世界の中央値を下回っていることが報告されています。

ジャーナル単位の指標によって行われる金銭的報酬では、多くの論文が期待される被引用パフォーマンスを達成していないとしており、また被引用数が著しく異なる論文へも同額の報酬が与えられることを問題点として挙げています。論文に対する金銭的報酬は、生産性をサポートする可能性はあるとしていますが、論文のインパクトを保証することはできないことを指摘しています。

Vîiu, GA.; Păunescu, M. The citation impact of articles from which authors gained monetary rewards based on journal metrics. Scientometrics. 2021. https://doi.org/10.1007/s11192-021-03944-9