2021年4月18日付で、Springer Nature社が刊行する科学計量学分野の査読誌“Scientometrics”に、フランスのトゥールーズ大学のGuillaume Cabanac氏らによる共著論文“Day-to-day discovery of preprint–publication links”がオープンアクセスで掲載されています。
プレプリントが査読後にジャーナル等で出版された際には、最新版を読者に提供するためにもプレプリントに出版者版のリンクを付与することが重要であると指摘しています。しかし、主要なプレプリントサーバは、プレプリントと出版者版の全てのリンクを特定できていないと述べています。
このことを背景として、論文ではCrossrefのメタデータを利用して、プレプリントと出版者版のリンクを生成するアルゴリズムが設計されています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する文献のキュレーションを実施しているCOVID-NMAイニシアティブのプレプリントのデータセットでアルゴリズムの評価が行われています。このセットは、343報のプレプリントで構成されており、そのうち121報が査読付きジャーナルで出版されています。プレプリントサーバは、出版されている121報のプレプリントうち39.7%について出版者版のリンクを提供していました。出版されていないものにリンクが正しく付与されていないこと(真陰性)なども勘案した精度は、78.7%となっています。対して、提案手法は、91.5%の精度で識別できています。
提案手法のプレプリントサーバでの利用を促進するために、提案手法を実装したソフトウェアは公開されています。また、提案手法は、COVID-NMAイニシアティブにおいて、利用されているとあります。
Cabanac, G.; Oikonomidi, T.; Boutron, I. Day-to-day discovery of preprint–publication links. Scientometrics. 2021. https://doi.org/10.1007/s11192-021-03900-7
参考:
Europe PMC、プレプリントの索引付を開始
Posted 2018年7月13日
https://current.ndl.go.jp/node/36328
出版者版とプレプリント版の間に大きな差はない?(文献紹介)
Posted 2016年4月26日
https://current.ndl.go.jp/node/31454