出版者版とプレプリント版の間に大きな差はない?(文献紹介)

学術出版者は査読をコーディネートし、出版までの間に論文の改稿に貢献すること等によって、学術コミュニケーションに付加価値を与えているとされています。一方で、この出版者の付加価値に対しては高額な購読料等のコストがかけられています。出版者による貢献にはそれだけの価値があるのか、検討した論文”Comparing Published Scientific Journal Articles to Their Pre-print Versions”がプレプリントサーバarXivで公開されています。

この論文の著者はカリフォルニア大学ロサンゼルス校の図書館員、Martin Klein氏らです。Kelin氏らはarXivで公開されていた論文プレプリントを収集し、その学術雑誌に掲載された出版者版と比較することで、査読や校正のプロセスでどれだけ論文内容が変化しているかを調査しました。その結果、プレプリント版と出版者版の間の差はごくわずかであったとしています。

今回公開されたKlein氏らの論文の内容は、2016年6月に開催されるJoint Conference on Digital Libraries 2016にて発表予定とのことです。

Martin Klein, Peter Broadwell, Sharon E. Farb, Todd Grappone. Comparing Published Scientific Journal Articles to Their Pre-print Versions. arXiv:1604.05363v1
http://arxiv.org/abs/1604.05363

参考:
社会科学分野の学術誌編集者に尋ねた出版プロセスの舞台裏(文献紹介)
Posted 2016年4月12日
http://current.ndl.go.jp/node/31324

CA1829 – 査読をめぐる新たな問題 / 佐藤翔
カレントアウェアネス No.321 2014年9月20日
http://current.ndl.go.jp/ca1829