2021年4月26日付で、Springer Nature社が刊行する科学計量学分野の査読誌“Scientometrics”に、スペイン・バレンシア大学のRut Lucas-Dominguez氏らによる共著論文“The sharing of research data facing the COVID-19 pandemic”が掲載されています。
この論文は、科学出版物の根拠となっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)についての研究データの共有状況を評価することを目的としています。対象とした科学出版物は、2019年12月1日から2020年4月30日までの期間にPubMed Centralに登録された論文のうち、COVID-19に関連がある5,905報です。うち13.6%である804報は研究データを含んでいます。最も研究データの共有を行っている学術雑誌は、The New England Journal of Medicine、The Lancet、The Lancet Infectious Diseasesであり、最も使用されているキーワードは肺炎(pneumonia)であり、最も使用されているリポジトリはGitHubおよびGenBankでした。
この論文では、わずか13.6%の論文が研究データの公開を行っていることが判明したとし、現在のような健康上の緊急事態においてさえ、データ共有は一般的な慣行ではないと推測しています。
Lucas-Dominguez, R.; Alonso-Arroyo, A.; Vidal-Infer, A. et al. The sharing of research data facing the COVID-19 pandemic. Scientometrics. 2021. https://doi.org/10.1007/s11192-021-03971-6
参考:
新型コロナウイルス感染症に関する研究データのポータルサイト「COVID-19データポータルJAPAN」が公開される
Posted 2020年10月5日
https://current.ndl.go.jp/node/42181
新型コロナウイルス感染症拡大下におけるデータ共有に関する研究データ同盟(RDA)のガイドラインのプレビュー(文献紹介)
Posted 2020年9月4日
https://current.ndl.go.jp/node/41929
英国医学院、英国の新型コロナウイルス感染症の前臨床薬の研究に関するデータベースを公開
Posted 2020年6月4日
https://current.ndl.go.jp/node/41134
研究データ同盟(RDA)、新型コロナウイルス感染症拡大下におけるデータ共有に関する提言及びガイドラインの最終案を公開
Posted 2020年6月4日
https://current.ndl.go.jp/node/41131
韓国科学技術情報研究院(KISTI)、国内外の新型コロナウイルス関連論文及び研究データをプラットフォームKOAR・DataOnを通じて公開すると発表
Posted 2020年4月30日
https://current.ndl.go.jp/node/40874
米・アレン人工知能研究所(AI2)・米国国立医学図書館(NLM)等の研究組織が共同して新型コロナウイルスに関する機械可読の研究データセット“CORD-19”を公開する
Posted 2020年3月24日
https://current.ndl.go.jp/node/40576
バイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)、「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する研究データ・リソース」のページを公開
Posted 2020年3月4日
https://current.ndl.go.jp/node/40391
70以上の研究助成団体・出版者等が新型コロナウイルスに関する研究データ及び研究成果の広範かつ迅速な共有に関する声明に署名
Posted 2020年2月4日
https://current.ndl.go.jp/node/40157