米・マサチューセッツ工科大学出版局、図書館の共同出資により学術単行書の持続可能なオープンアクセス(OA)化を実現するためのプログラム“Direct to Open”(D2O)を開始

2021年3月2日、米・マサチューセッツ工科大学出版局(MIT Press)は、図書館の共同出資により学術単行書の持続可能なオープンアクセス(OA)化を実現するためのプログラムとして、“Direct to Open”(D2O)を開始したことを発表しました。

MIT PressはD2Oについて、図書館が学術単行書を自館のコレクションに加えるために購入するビジネスモデルから転換し、学術単行書をOA化するために資金を出資するビジネスモデルへ参加する機会を与えるプログラムとして説明しています。2022年以降、MIT Pressの新刊学術単行書及び新たに選集として刊行する単行書は、D2O参加機関の出資金により全てOA化することを予定しています。

D2Oのプログラムに参加する機関は、クラウス(Rosalind Krauss)、デネット(Daniel Dennett)、チョムスキー(Noam Chomsky)など著名な研究者の単行書を含む、MIT Pressのアーカイブタイトルへのアクセス権を得ることもできます。MIT Pressはプログラムを実施する背景として、大半の米国の大学出版局では、1990年代半ば頃まで学術単行書は概ね出版コストをカバー可能な1,500部から1,700部程度の売上であったところ、現在は平均して300部から500部程度であり、出版のための補助金等が必要になっている状況を説明しています。このような出版状況の中、D2Oのビジネスモデルは、長期的に取り組まれた学術研究の成果をキュレーションし、流通させるという自身の中核的な使命を一層持続可能にする、としています。

D2OプログラムはArcadia基金の支援に基づいて開発されました。MIT Pressは2021年夏に、同プログラムに関する報告書を発表する予定です。

The MIT Press launches Direct to Open(MIT Press,2021/3/2)
https://mitpress.mit.edu/blog/mit-press-launches-direct-open

A New, Collective Action Open Access Business Model for Scholarly Books(MIT Press)
https://direct.mit.edu/books/pages/direct-to-open

参考:
CA1907 – 動向レビュー:欧州における単行書のオープンアクセス / 天野絵里子
カレントアウェアネス No.333 2017年9月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1907

Knowledge Unlatched(KU)、2020年の共同出資の募集結果を発表:学術書310タイトル・学術誌34誌がオープンアクセスに
Posted 2021年2月17日
https://current.ndl.go.jp/node/43303

OAPEN、単行書のオープンアクセス出版に関する理解を深めるためのツールキット“OAPEN Open Access Books Toolkit”を公開
Posted 2020年10月1日
https://current.ndl.go.jp/node/42145

SCOAP3、単行書のオープンアクセス化のためのパイロット事業を開始
Posted 2020年6月30日
https://current.ndl.go.jp/node/41379