SPARC Europe、欧州の研究助成団体を対象としたオープンアクセス(OA)方針・研究データポリシーに関する調査報告書を公開

2019年9月30日、SPARC Europeは、欧州の研究助成団体を対象としたオープンアクセス(OA)方針・研究データポリシーに関する調査報告書“Insights into European research funder policies and practices”の公開を発表しました。

この調査は2019年春、SPARC Europeを中心に欧州のアカデミー組織連盟であるAll European Academies(ALLEA)・欧州財団センター(European Foundation Centre:EFC)・Science Europe等の団体との協議の下で実施されました。調査に対して29か国の62団体から回答があり、この回答に基づいて報告書が作成されています。回答した団体の中には主要国の助成団体(約半数)や欧州規模の助成団体、各国・地域の学術機関、慈善団体等が含まれています。

SPARC Europeは調査結果から得られた主要な知見として以下の5点を挙げています。

1. OA方針を制定していない団体は24団体でそのうち半数は現在策定中である。研究データポリシーについては42団体で制定されておらず策定中の団体も13に留まっている。施行中のOA方針のレビューを過去3年間に実施した団体は15団体であった。より多くの助成団体がOA方針やオープンデータに関する方針を採用し既存のポリシーを強化することを促す必要がある。

2. ポリシーが制定されていてもその実践がOAや研究データのイニシアチブに対する投資に反映されていない助成団体が確認できる。制定されたポリシーが各団体のオープン化に対する関わり方とどの程度合致しているのか分析することが必要である。

3. OA方針を制定していると回答した団体は比較的欧州全域に分布しているのに対して、研究データポリシーを導入している団体は北欧と西欧に偏りが見られる。地域間のギャップを埋める必要がある。

4. 52団体が助成した研究のOA化にも助成を実施していると回答している。43団体は論文処理費用(APC)支払に上限を設けていないが内9団体が検討中である。APC支払へのキャップ設定はPlan S原則で言及された内容でもあり、APC支出に対するレビューや出版社へのAPC価格・コスト構造の透明化と価格削減の要求を進める必要がある。

5. OA方針の遵守をモニタリングしている団体は23団体である一方、研究データポリシーについては9団体に留まっている。また、ポリシーに遵守しないことが実際的な影響をもたらすことはほとんどないようである。ポリシー遵守のより一層のモニタリングと強制力の強化が必要である。

リポジトリZenodoで調査報告書、及び調査結果のデータセット、調査で使用されたアンケートが公開されています。

Discover how European funders are approaching Open policy and practices in new report(SPARC Europe,2019/9/30)
https://sparceurope.org/discover-how-european-funders-are-approaching-open-policy-and-practices-in-new-report/

Insights into European research funder policies and practices(Zenodo,2019/9/30)
https://doi.org/10.5281/zenodo.3401278

Insights into European research funders policies and practices – public dataset(Zenodo,2019/9/30)
https://doi.org/10.5281/zenodo.3457556

SPARC Europe Survey of European Research Funders (Question Set – March 2019) (Zenodo,2019/3/27)
https://doi.org/10.5281/zenodo.2611114

参考:
Horizon 2020に替わる新たな研究資金助成プログラム”Horizon Europe”、欧州議会で承認 オープンサイエンス推進に関する条項も含まれる
Posted 2019年5月14日
https://current.ndl.go.jp/node/38150

SPARC Europe、Plan Sの実現にかかる手引きへのフィードバックを発表
Posted 2019年2月26日
https://current.ndl.go.jp/node/37656

欧州大学協会(EUA)、欧州の大学におけるオープンアクセスの進捗状況に関する調査報告書の第4版“2017-2018 EUA Open Access Survey Results”を公開
Posted 2019年5月9日
https://current.ndl.go.jp/node/38126

E1880 – オープンサイエンスの潮流と図書館の役割<報告>
カレントアウェアネス-E No.318 2017.01.26
https://current.ndl.go.jp/e1880

E2162 – どの研究データを保存すべきか:英・Jiscによる調査レポート
カレントアウェアネス-E No.373 2019.07.25
https://current.ndl.go.jp/e2162