2015年6月5日、英国出版協会(The Publishers Association)は英国図書館長協会(Society of Chief Librarians:SCL)と共同で2014年3月から実施していた電子書籍の貸出に関するパイロットプロジェクト、”Pilot Study on Remote E-Lending”の報告書を公表しました。
このプロジェクトは公共図書館の電子書籍貸出の影響を測定する目的で行われていたものです。報告書では主なプロジェクトの知見として、以下の点等がハイライトされています。
・プロジェクトによって新たな利用者への貸出が増加した
・プロジェクト対象図書全体の貸出のうち、電子書籍の貸出は5%以下にとどまった
・利用者の95%が対象図書がより増えれば、より多くの電子書籍を借りるだろうと考えていた
・電子書籍を借りた人のうち39%は今後、書店を訪れる頻度が減るだろうと考えており、37%が新たに紙の図書を買うことも減るだろうと考えている
・プロジェクトでは電子書籍を借りる際に購入するボタンも設置していたが、このボタンをクリックしたものはごくわずかにとどまった
・電子書籍を借りた人は他の図書館利用者よりも裕福で、あまり図書館を訪れない人だった
この結果を受け、英国書籍販売協会(Booksellers Association)CEOのTim Godfray氏は、公共図書館が電子書籍を自由に貸し出せるようになることは、書籍販売業に損害を与えるだろうという懸念を示しているとのことです。
Statement on the main findings from The Publishers Association, Society of Chief Librarians, Booksellers Association, Society of Authors and Association of Authors Agents(The Publishers Association、2015/6/5付け)
http://www.publishers.org.uk/policy-and-news/news-releases/2015/pilot-study-on-remote-e-lending/
Remote e-lending hits bookshop and library footfall(The Bookseller、2015/6/5付け)
http://www.thebookseller.com/news/remote-e-lending-hits-bookshop-and-library-footfall
英国で1年間にわたる実験が終了「公共図書館での電子書籍貸し出しは、購入につながらない」(ITmedia、2015/6/8付け)
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1506/08/news112.html
参考:
英国の公共図書館で電子書籍の貸出に関する試行プロジェクト、開始から半年経過
Posted 2014年11月25日
http://current.ndl.go.jp/node/27493
図書館で電子書籍を貸し出すと購入につながる?(英国)
Posted 2014年4月15日
http://current.ndl.go.jp/node/25937
英政府、公共図書館の電子書籍貸出に関するジークハルト・レビューおよび対する政府回答を公表
Posted 2013年3月29日
http://current.ndl.go.jp/node/23210
PLA、英国の公共貸与権の拡張について周知
Posted 2014年8月14日
http://current.ndl.go.jp/node/26805