障害を持つ図書館員の経験に関するオートエスノグラフィ(文献紹介)

2024年1月10日付けで、査読付きオープンアクセス誌“In The Library With The Lead Pipe”に、論文“Chronically Honest: An Autoethnographic Paper on the Experiences of a Disabled Librarian”が掲載されています。著者は、オーストラリア・サザンクイーンズランド大学の司書であるNikki Andersen氏です。

障害を持つ図書館員の経験に関して、著者が個人的経験を分析したオートエスノグラフィ(自らの経験を活用し分析する学術的なストーリーテリングの一形態)です。障害と図書館員に関する現在の文献のほとんどは障害のある学生や利用者へのサービスに焦点が当てられており、障害を持つ図書館員の経験について考察されたものは少ないとし、論文では、結合組織疾患であるスティックラー症候群を持つ自らの経験や文献調査を通して、図書館情報学(LIS)の職に就いている障害者の現実について考察しています。

「インクルージョン(包摂性)」の意味は人それぞれであり、障害を包摂する職場を作るための処方箋はないとしつつ、障害者の声を聞き、偏見を問い直し、障害の多様な経験を理解することで、図書館の仕事はより包摂的なものになるだろうと結んでいます。

Andersen, Nikki. Chronically Honest: An Autoethnographic Paper on the Experiences of a Disabled Librarian. In The Library With The Lead Pipe. 2024. https://www.inthelibrarywiththeleadpipe.org/2024/chronically-honest/

参考:
隠れた障壁:目に見えない病気や障害を持つ学術図書館員とアーキビストの経験(文献紹介) [2023年09月15日]
https://current.ndl.go.jp/car/192715