カレントアウェアネス
No.178 1994.06.20
CA946
UnCover−指先で世界の情報を−
UnCoverとは,データベース上で検索した雑誌の論文をオンラインで発注し,原文を入手するシステムで,従来別々であった検索と原文入手とを一体化させたものである。収録雑誌のタイトル数は15,000で,論文の言語は主に英語である。l994年2月からフランス語とドイツ語の論文を扱い始めた。現在の収録論文件数は約500万件で,毎日3,000から4,000件が追加されている。収録期間は1989年から現在までで,タイムラグなしの雑誌の最新号が検索できる。出版社から直接UnCover社に送られるものもあるので,発売より先に論文が収録される場合もある。収録分野は科学技術および医学系が53%,社会科学系が33%,人文系が14%で,学術論文が対象となっている。検索した画面上で発注した論文は,24時間以内にファクシミリで提供される。提供される論文は,全て著作権がクリアされている。一度注文を受けた論文は光蓄積装置に蓄えられるので,次回からは1時間以内にユーザーヘファックスで送られる。あらかじめテーマを登録しておくと,電子メールで論文の目次を送ってもらえるSDIサービスもある。
さて,UnCoverの主なサービスは以上の様なものだが,UnCover社とは一体どのような企業だろうか。UnCover社の母体はCARL(Colorado Alliance of Research Libraries)で,CARL は元々コロラド州デンバー周辺にある6つの研究図書館の雑誌の受入れ業務の開発にあたっていた。CARLは1988年に営利団体となり,UnCoverという雑誌論文検索と原文提供のシステムを持っていたが,その部門が独立し,1993年にB.H. Blackwell社との合弁会社としてUnCover社が発足した。
UnCover社は参加館の雑誌の受入れ業務を代行し,その時点で雑誌の目次をデータベースに入力している。現在では参加館が15館以上で,デンバー地域に留まらず,ハワイ大学等の所蔵するユニークなタイトルも含まれるようになった。収録誌を増やすのには,他の代表的な索引誌を参考にして選別したり,出版社や図書館員の助言をうけたりしている。
各参加館にはUnCoverの社員が駐在していてオンラインで注文が来ると文献を書架にとりに行き,スキャナーで読み込ませ,UnCover社がファックスで配信する。デリバリー数は平日で1日平均600〜700件である。利用中や製本中で見付け出せない場合は,他の参加館へ回すなどして,大体90%充足するという。しかし,著作権をもつ出版社で原文の提供を認めない所も数社あり,それらは入手できない。米国では雑誌のタイトル数が増えている反面,図書館や研究機関では予算の制約から雑誌の購入を減らさねばならない状況にある。出版社としては冊子体の発行と並んで著作権料での収入も大きな収入源となりつつある。また図書館側にとっては利用の少ない雑誌はUnCoverを利用し,書庫を有効に使うといったメリットもある。
さてUnCoverに接続する場合,オープンアクセスといって,インターネットを経由して1回ごとに料金を支払うものと,年会費を払ってパスワードをもらうものとがある。後者は1994年4月から丸善のMASISセンターが仲介してサービスを行っている。前者は後者に比べ多少割高だが,米国では半数以上がオープンアクセスによる利用である。どちらも時間による料金方式ではなく,書誌事項の検索だけでは無料,論文を発注した時に料金がかかるシステムになっている。
検索画面はメニュー方式だが,ブール演算子や前方一致での検索もできる。また,雑誌の目次をブラウジングするといった機能もついている。論文名やサマリーからとったキーワード,著者名,雑誌名などが検索キーである。
UnCover社は,将来,参加館を増やし,1994年末には2万タイトル収録を目標としている。新たな参加館としては,オーストラリア国立図書館などが予定されている。将来的にはアジア・環太平洋地域を充実させ,ワールドワイドに拡大する方向とのことで,今後の展開が期待される。
嶋田真智恵(しまだまちえ)
Ref: 特集UnCover MASIS NEWS 15 (3) 83-85, 1994