カレントアウェアネス
No.176 1994.04.20
CA938
LCの保育所開所を迎える
昨年9月,LCから6ブロックほど離れた小学校跡地に職員待望の保育所が誕生した(CA720参照)。「これからの保育の最高のモデルとなるだろう。」という施設開所式でのLC館長の言葉を始めとして,関係者はこの保育所を絶賛している。
安全面に配慮された施設は,平日の午前7時15分から午後6時15分まで開き(例外的に延長保育も可能),乳児から学齢前の子どもまでl00人を収容する。なお,入所対象児童には上下両院職員の子どもも含まれる。保育料はl人あたり週に115〜150ドルで,10人まで対象の週50ドルの奨学金も用意されている。また,発達学の専門家や幼児教育経験者で構成される教師は,9月時点でl2名おり,幻の連邦保育所基準(1981年に社会保障法案の一環として準備されたが実現しなかった)の教師対入所児童の比率を達成している。保育所の運営は,LC児童保育の会が行い,方針として「子どもの発達段階に合わせた保育」,「人種・宗教・障害等による差別のない受け入れ」を掲げる。
順調に滑り出した保育所だが,1970年代に始まった設置運動から現在のLC児童保育の会の活動に至るまでの20年余りの間,様々な団体が存在し,多数のLC職員が保育所開所に向けて努力を重ねてきたことを忘れてはなるまい。彼らの多くは保育所の恩恵を受けられなかったが,長年の試行錯誤の末保育所の質を向上させ次世代の職員のために貢献した意義は大きい。
さらに,総額550万ドルに及ぶ保育所設置関連費用の支出が1990年に連邦議会で認められるまでの継続的な議会の支援も付け加えたい。アメリカでは,連邦として一貫した保育政策が存在せず,保育所の施設・職員の基準が各州に任されており,また,民間のサービスが先行していることもあって,保育所間の格差が存在し,公的サービスはそれを補完するという状況である。そうした中で,今回のLCの保育所の例は,公的機関が積極的に高水準の保育所を設けたという点で,アメリカの公的保育サービスに対するよい刺激にもなるだろう。
今後,入所児の親達は,保育所支援目的の資金収集のため毎月2時間程度のボランティアをすることになるようだ。これまでの20年間の運動の流れは,この先もしっかりと受け継がれていきそうである。
蛭田顕子(ひるたあきこ)
Ref: Melhuish, Edward et al. Day Care for Young Children. Routledge, 199l. p.161-184.
The Gazette 1993.7.30, 1993.9.24
LC Inf Bull 49 (23) 388, 1990.l1.19