カレントアウェアネス
No.156 1992.08.20
CA825
情報サービスの評価法
情報は,現代経済の中で重要な資源となりつつある。情報管理能力の如何により,組織・研究機関の成功や,国家の発展までもが左右されるであろう。一方,情報サービス事業では慢性的に資金が不足しており,経費の削減やサービスの有料化が必要となってきている。そこで,情報サービス事業の経営をどのように行うか,また,経営実績をどのような基準により評価すべきかが問題となる。
本稿では,以下に三つの評価基準を紹介する。
(1) 業績performance評価基準
業績を量的に評価する基準としては,
- サービスの利用者の数
- マーケット浸透度(利用者数/潜在的利用者の総数)
- 提供した物(出版物等)・サービスの量
- どれだけタイムリーに提供されたか
などがある。
業績を質的に評価する基準としては,
- サービス機関の有する全ての情報の内から依頼者の指定した事柄に関する全ての情報を提供しえたか
- 依頼者の必要とする情報のみを提供しえたか(要求に適合する情報,および依頼者にとって未知の情報という点で)
- 情報サービスの質が依頼者の期待に応えるものであるか
- サービスの信頼性および柔軟性
(2) 効用utility評価基準
個人的な効用が増大したか否かは,例えば,その情報サービスにより個人の創造力が刺激され,優れた革新的な研究がなされたか,等により評価される。
社会的な効用が増大したか否かは,例えば,
- 社会福祉が増進したかどうか
- 経済的な点で国際競争力がついたかどうか
- 文化・環境の条件が向上したかどうか
等により評価される。
(3) 有効性efficiency評価基準
有効性は以下の二つの概念を含んでいる。
- 生産性−情報サービス機関が入手した全情報の量と,提供した全情報の量との比
- 収益性−情報サービス機関が入手した全情報の価値と,提供した全情報の価値との比
以上の三つの評価基準(業績評価基準・効用評価基準・有効性評価基準)には,主観的にしか評価しえないものや,複数の情報サービス機関に順位をつけて評価する場合にしか用いることができないものもあり,実際に適用するのは容易ではない。
そこで一つの情報機関内部の実績をより客観的に測定する方法も考え出されている。以下は“objective matrix”と呼ばれるその例である。
点 | 10 | 9 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
A | 100 | 99 | 98 | 97 | 96 | 95 | 94 | 93 | 92 | ≦91 |
B | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | >9 |
A | B | |
評価(上記の表で与えられた点・V) 加重値(W) | 4 7 | 7 3 |
加重された評価(V×W) | 28 | 21 |
加重値は,ここでは総計が10になるように各評価項目に適宜配分された重みである。すると,この例では業務達成指数は49(=28+21)となる。もち論,A・B以外にも評価項目は適宜設定できる。
最後になったが,有効性の追求は,情報サービスを受ける者の需要を満たすための手段の一つにすぎない。有効性の追求のあまり,重要ではあるが,時間や経費のかかる長期的なサービス提供計画を軽視してはならないであろう。
大村美由紀(おおむらみゆき)
Ref: Stroetmann, K.A. et al. Performance and efficiency criteria for professional information services: an introduction. FID News Bulletin 42 (1) 5-11, 1992
Nel, P.J. et al. Productivity measurement in an information service with the aid of the objective matrix. FID News Bulletin 42 (1) 14-18, 1992