CA824 - ポルトガルの大学図書館ネットワーク / 野口貴弘

カレントアウェアネス
No.156 1992.08.20


CA824

ポルトガルの大学図書館ネットワーク

ポルトガルには11校の国立大学があるが,それらに属する図書館は規模,蔵書量,機械化の進度,ネットワークへの取り組み等において,様々な段階にある。多くの大学は,準独立的な機関の集合体のようなもので,それぞれが独自の教育プログラムと図書館を有している。伝統のある総合大学の一つであるリスボン大学には50以上もの大小さまざまな図書館がキャンパス内に散在している。従って,それぞれの大学は調整機関を設け,学内図書館間のサービスの調整や図書館の機械化,全学総合目録の編纂,スタッフの訓練,管理・会計事務及び論文の保存等の業務を委ねていることが多い。

近年,大学図書館員の間で,より意志の疎通を図ることが必要だという認識が増大しつつある。図書館資源の共有,相互協力,サービス拡大のためにネットワーク,特にコンピュータを利用したネットワークを築くことの必要性が増してきており,ポルトガルの大学図書館は変革の時期に直面しているといえる。

ネットワークの一つの手段として,1987年から本格稼働し,ポルトガル国立図書館が維持している書誌データベースPORBASEがある。しかし,現在のところ期待に応えるものにはなっていない。大学図書館,公共図書館を含めた国内の主な図書館はPORBASE作成事業に参加して,データの入力を行っているのに,利用の際には料金を徴収される。PORBASEは国内出版物の書誌データを収録しているが,納本図書館が大学図書館,公共図書館を含め14館もあるため,相互貸借で利用されるのはほとんどが国外出版物である。

そこで,大学図書館間をネットワークで結び,図書館資源の共有化をはかる試みがなされている。現在,リスボン市内にある大学図書館間は,民間のリース回線を利用して結ばれている。また,民間資本による情報通信システムが国家的規模で開発されようとしている。それは,CCITT(国際電信電話諮問委員会)の定めた公衆データ網技術の標準化のための国際規約のうち,X.25(コンピュータネットワークに関するもの)及びX.400(電子メールシステムに関するもの)を採用しており,高度なデータ通信を可能とする。この通信網は,通信速度64キロビット/秒という高速度回線によって結ばれ,リスボンとポルトにデータ交換センターを設置することになる。そして,ブラガ,コインブラ,アベイロといった遠隔地の諸都市からのアクセスが可能となるだろう。この計画の第一段階は完成に近づいており,1992年中に利用可能となる予定である。この通信網を利用して大学図書館間を結び,これまで僅かしかなかった資料の相互貸借を制度的に行うことでより活発な調査研究活動と大学間の学術交流が期待できる。最終的にはポルトガル本土全ての大学図書館がネットワークで結ばれ,さらに,それは他館種にまで拡がり,ポルトガル図書館の発展に大きく寄与することであろう。

野口貴弘(のぐちたかひろ)

Ref: Cornish, Graham P. An academic library network for Portugal. Information Management Report. 10-11, 1992.1
Buller, Nell. Libraries and Library Services in Portugal. Halifax, Dahlousie University, 1988, 121p