CA823 – 図書館協力のためのデータサービス整備:ドイツ研究協会の新提案から / 斎藤純子

カレントアウェアネス
No.156 1992.08.20


CA823

図書館協力のためのデータサービス整備
−ドイツ研究協会の新提案から

連邦国家ドイツでは,図書館ネットワークは各地方(ほぼ州に対応する)ごとに構築されてきた。旧西ドイツ地域にすでに7つのネットワークが成立しており,2つが構築中である。今後の重要課題は,各ネットワーク間を結ぶ全国的協力体制の整備である。

中核的な学術振興機関であるドイツ研究協会(DFG)の図書館委員会は,これまでに「地方ネットワークシステムの構築及び地方図書館センターの設立に関する勧告」(1979年)及び「館内ネットを含めたネットワークシステムのさらなる発展のための提案」(1986年)を発表してきたが,1991年3月,データ処理・コミュニケーション技術小委員会が提出した「共通基準に基づいた分散・集中システムの統合による電子データ処理利用図書館サービスのさらなる発展のための提案」を承認した。この新提案は,その後の経験を踏まえてこれまでの勧告を補足し,主として各図書館及び地方センターの計画担当者及び政策決定者に向けて電子データ処理導入の基準をより具体的に示そうとするものである。文書は現状の報告と勧告から成るが,ここではこれに基づき,全国的データサービスの進捗状況と課題について概観したい。

全国センターとしてはドイツ図書館及びドイツ図書館研究所(DBI)が,部分的にはプロイセン文化財団国立図書館,バイエルン図書館連合及びバイエルン国立図書館の協力を得て,1)目録作業のための書誌情報の提供,2)地方ネットワーク間相互貸借業務のための情報提供・管理,3)典拠ファイルの提供,の各分野で活動を行っている。提供されている各データサービスの状況は,以下のとおりである。

「学術雑誌総合目録」は,マイクロフィッシュ形態及びオンラインで利用可能となっているが,その内容の完全性・継続性及び質の高さによって最も重要なデータベースの一つである。ただし,まだ二つの州の所蔵資料は完全には収録されていない。現在の内容水準を維持すると共に収録率を上げることが今後の課題である。

「図書総合目録」は,やはりマイクロフィッシュ形態及びオンラインで利用可能であるが,収録対象館の数が少ないため,相互貸借にはあまり役立たない。そのため,ドイツの学術図書館の所蔵文献を網羅する新たな全国総合目録の構築が緊急課題となっており,準備作業がDBIで開始されている。作業方法としては,すでに地方ごとの目録作業システムが存在する以上,独自のオンライン目録作業システムを作ることは無意味であるとされ,当初は主としてオフラインで各地方のデータを図書総合目録に集め,できるだけ頻繁にデータを更新するよう提案されているが,将来的には,オンライン・ネットワークにより目録作業者が直接アクセスする方法の検討も謳われている。

「共通団体典拠ファイル」は,学術雑誌総合目録と同様,その内容の完全性・継続性及び質の高さによって重要な情報源となっている。この他に,「件名典拠ファイル」及び「個人名典拠ファイル」の作成もDFGの助成プロジェクトとして推進されている。なお,典拠ファイルが多くの図書館で受け入れられるためには,ディスク,CD-ROMなど様々な形態で提供され,様々な方法で利用館の処理システムに組み込めるようにする必要があるとされている。

「ドイツ全国書誌」は目録作業のための外部データとしてずっと以前から利用されている。地方センター及びネットワーク不参加館の機械化状況が様々であるので,データは伝統的形態及び機械可読形態(磁気テープ,ディスク,CD-ROM)で提供されている。全国書誌データサービスについては,さらに拡充する必要があるとされ,今後の方向としては,外国の書誌サービスの国内への導入,1913年以降のドイツ語出版物を対象とする遡及サービス,件名付与の拡充,ヨーロッパ各国間での協力の強化,出版社・書籍商との協力の強化が挙げられている。

なお,旧東ドイツ地域の学術図書館については,州ごとに独自にネットワークを構築するのでなく,旧西ドイツ地域の既存の地方ネットワークとの協力により,早急に全国サービスを受けられるようにすべきであるとしている。また,図書総合目録及び学術雑誌総合目録への参加も勧告されている。

齋藤純子(さいとうじゅんこ)

Ref: Vorschlage zur Weiterentwicklung EDV-gestutzter Bibliotheksdienstleistungen durch Integration von dezentralen und zentralen Systemen auf der Basis gemeinsamer Standards. Z Bibliothekswes Bibliogr 38 (4) 317-349, 1991