CA712 – 東西ドイツ図書館の相互協力 / 金子縁

カレントアウェアネス
No.137 1991.01.20


CA712

東西ドイツ図書館の相互協力

1989年11月の壁開放以降における,東ドイツの急激な自由化と東西統一への流れをうけて,東西ドイツの図書館もまた,文献供給,資金調達,人の交流等,様々な面で協力しあい,統一に向けて努力をしている。

東ドイツの情報の自由化に応えるため,ドイツ図書館連盟連合(BDB)はまず,東の主な図書館に西側の新聞を備えるよう,新聞社の協力を得ることから始めた。次に,西ドイツの各市に,東ドイツ図書館とパートナー関係を結んで,東側での情報提供を改善するよう要請した。

ベルリンの東西国立図書館では,機能の統合を始めている。ドイツ図書館研究所(DBI)は,東側の図書館制度中央研究所と協力し,東の図書館リスト作成,共同統計,東の所蔵逐次刊行物のZeitschriftendatenbank(ZDB)への収録等に着手した。フランクフルトとライプツィヒの両ドイツ図書館は,位置はそのままで機関として統合する構想をたてている。

ドイツ学術振興会(DFG)は壁開放前より東への協力を準備し,文献供給等の支援をおこなっている。その他,フォルクスワーゲン基金,教育学術省,および各州政府が東の大学図書館に資金を援助している。

1990年2月には,BDBと東の国立図書館の間で会議が開かれ,当面の措置として,相互貸借についてのとりきめがおこなわれた。この相互貸借には東側から各地域のリーダー図書館が加わり,東西各地域の間でパートナー関係が定められた。東の各地の中央図書館にはZDB等西側のフィッシュ目録が備えられ,東の目録にない資料があればこの目録をひき,パートナー地域の図書館に発注する仕組みとなっている。

4月にはBDBは東独代表を加えたKoordinationsgremiumを開催,“Berliner Memorandum”を発表した。内容は以下のとおりである――あらゆる種類の図書館を支援する。文献供給がかたよらないよう,BDB,DBIと東側の中央研究所が調整を行う。東側の図書館の発展には,西側の方法・手段を知ることが大切であり,あらゆるレベルでの交換プログラムが必要である。東の学術図書館で今最も必要とされているものは,利用の多い教科書,西側の基礎文献,コピー機等であり,公共図書館では基礎的な実用書や専門書,今まで東ドイツで紹介されなかった世界文学,専門分野や一般のニュース,民主主義のための情報源としての新聞・雑誌が求められている。どんな際にも東西の専門家が相談して対処すべきである。情報を求める東ドイツの人々が西側の図書館にも押しよせているため,州や連邦の援助が必要である。

統一ドイツにおいて,学術図書館・公共図書館は,どのような形で活動してゆくのか。DFGや,州・連邦の専門家のグループが検討中である。その計画は,1993年にライプツィヒで開かれる第1回統一ドイツ図書館会議で公表される予定である。

金子 縁(かねこゆかり)

Ref: Mittler, Elmar. Auf dem Weg zur Einheit im deutschen Bibliothekswesen : Die ersten sechs Monate. Bibliothekswes. Bibliogr. 37 (4) 354-357, 1990.
Sitzung des Koordinationsgremiums der BDB in Berlin. Bibliotheksdienst 24 (5) 565, 1990.
Bibliotheken im zusammenwachsenden Deutschland. Bibliotheksdienst 24 (5) 566-568, 1990.
Vorlaufiges Verfahren im Leihverkehr zwischen Bibliotheken…Bibliotheksdienst 24 (5) 590-593, 1990.