CA801 – 児童の読書と図書館利用:日仏の調査から / 服部富美子

カレントアウェアネス
No.152 1992.04.20


CA801

児童の読書と図書館利用−日仏の調査から−

テレビ・ゲーム,ビデオ等の普及に伴って児童の読書離れが進行している現象を憂慮する声が多い中,日本,フランス両国で,児童図書館の利用調査を通して,児童の読書の実態を探った報告が発表されたので,内容を簡単に紹介するとともに,児童の読書の傾向,児童図書館の役割について考えてみた。

日本の報告は,東京都内の一児童図書館の満3歳から15歳までの児童63名の貸出記録約13,500件を,年齢による読書興味の変化,同一図書の重複借り出しの変化,男女差等の調査項目について統計的に分析し,児童の読書の発達モデルを作成したものである。このモデルを見ると,児童の読書興味の内容が,年齢を追って分野別に変化していく様子がよく分かるが,報告の筆者は,その変化が自然に起こるのではなく,やはり一つの分野から次の分野へ移行するためには,積極的な指導が必要と,強調している。さらに,このモデルで興味深いのは,児童は低年齢層程,同じ本を重複して何度も借り出す傾向にあるが,小学校中学年以上でもこの傾向はかなり見られるという点で,この原因として筆者は,児童は読んだことのない未知の分野に少なからぬ不安を抱いていて,特にある程度の厚さの本になると,自分が読み切れるか,内容が面白いかを考え込んでしまって,なかなか新しい分野にチャレンジできないということが考えられるとしている。そして,その対策として,本の内容を簡単に紹介するブック・トークの有効性を説いている。

フランスで発表された報告も,児童図書館の貸出記録に基づいたものであり,パリ近郊の3都市の児童図書館における1970年代の貸出記録23人分を抜き出し,現在,20歳前後になっている彼等に一人ずつ個別にインタビューして,その結果を色々な角度から分析している。この調査の主眼点は,過去の読書経験や図書館の利用体験と,現在の彼らの読書傾向や生活との関連を追求することで,個別のケースを詳しく紹介している。結論として,当然なこととも言えるが,過去に豊かな読書経験,読書の喜びを知った人達は,現在も図書館を良く利用し,読書に多くの時間を割いているという事が分る。さらに幼少期,児童期の家庭環境(父母の役割),友達,また児童図書館の建物や雰囲気等が児童を読書に向ける大きな要因と指摘している。

この2つの調査報告より,児童期に読書に興味を持たせるためには,興味を上手に引き出す家庭,学校,児童図書館等の環境と,そこにおける読書指導の重要性を痛感させられた。

服部富美子(はっとりふみこ)

Ref: 樋口洋子 成長期における児童の読書 興味の変化とモデル化 図書館学会年報 37 (4) 166-178, 1991
Kersebet, Francoise, Que sont nos lectures d'antan devenus? Bull. Inf.-Assoc. Bibl. Fr. (151) 20-35, 1991