CA778 – 図書館システムの管理者―アメリカの場合― / 渡辺和重

カレントアウェアネス
No.148 1991.12.20


CA778

図書館システムの管理者−アメリカの場合−

米国のDynix社は,自社のシステム・機器を管理しているスタッフに関する知識を得るために,公共・学術・専門図書館のシステム管理者の経歴や図書館内での組織上の地位などに関する調査を行った。調査は1990年12月に同社の顧客を対象として行われ,148件の回答が得られた。なお,同社からソフトウエアのみを購入している図書館の場合,回答者の多くは図書館の管理職で,データ処理等システム管理の技術的な仕事に携わっている職員ではなかった。

回答者全体の80%がMLS(図書館学修士)を取得しており,このうちの30%のみが追加的にコンピュータやプログラミング,ハードウエアなどOA化に関する教育を受けていた。MLSをもたない者の中でも,コンピュータサイエンスの学位をもつ者は2%のみであった。

回答者の80%は,すでに雇用されていた図書館でシステム管理者に就任していた。就任時に回答者の3分の2は肩書が変わり,昇給を受けた者は25%であった。

図書館がシステムの専任管理の必要性を感じているのは明らかで,回答者の74%は専任のシステム管理者ではなかったが,週に最長50時間,全体で平均11.5時間がシステム管理の仕事に向けられていた。「システム管理はその場しのぎ的なものではないことを図書館の運営面で明確にする必要がある。」というような回答も見られた。

図書館の機械化の流れとしては,機械化への興味と意欲がある者が機械化を推し進め,システム管理の責任を受け継ぐというケースが多かった。その一方,「悪い時期になったものだ。」「何故自分がこの仕事についているのか判らない。」などという回答にみられるように,システムの管理という仕事に積極性を持てないケースもみられた。

この調査の報告書は,データベースの増加やOPACの拡大に伴い,図書館におけるシステム管理の重要性が増加しており,図書館はシステムの管理者の組織上の位置や技能を再評価する必要があることを強調している。なお,今回の調査で,システムの管理者が必要であると判断した場合は,直接図書館長に報告ができるという回答が全体の3分の2を占めていた。

資料の受入から閲覧にいたる各種システムの管理は,ハードウエアやソフトウエアに関する専門知識が必要とされる点で,アメリカにおけるこれまでの司書の職域を越えた業務である。同時に,図書館の運営面からみれば,単なる機器管理の域を越え,図書館の機能を左右する程の重要な業務となっている。図書館組織内の位置付けや技能の再評価のみならず,司書教育の在り方という面からも極めて大きな問題といえるのではないだろうか。

渡辺和重(わたなべかずしげ)

Ref: Epstein, S.B. et. al, Managing technology: administrators of automated systems. Libr. J. 116 (11) 56-57, 1991. 6. 15