CA777 – LCの一括目録作業 / 大川龍一

カレントアウェアネス
No.148 1991.12.20


CA777

LCの一括目録作業

米国議会図書館(LC)は,増大し複雑性を増している図書館資料に対する利用者のアクセスを保証するために,様々な方法で資料を整理している。一括目録作業(collection-level cataloging)もその一つである。これは,文書整理の伝統に基づいたもので,個人,家族,団体,言語,主題,資料形態などの特徴に基づいた関連性によって人為的にまとめられた資料群ごとに,単一の書誌レコードを作成する。

一括目録作業は最初,600以上の,認知度の低い言語(lesser-known languages)で書かれた資料に対しておこなわれた。これらの資料群の書誌レコードは,言語ごとに,以下のように構成される。

[言語名](総合タイトルとして)
[出版地不明;出版者不明,<出版年>]
形態に関する事項(作業時点での冊数等)内容細目(部分的)
[言語名]−Texts(件名標目として)

一括目録作業は,主題目録担当者によってもおこなわれる。該当するのは,政党や特定団体の小冊子類,特定の文芸思潮を示す文学作品,個人や組織による,もしくはそれらについての出版物,特殊な主題についてのレポート類などである。例えば,

タイトル:[Italian Communist Party pamphlets]
件名標目:Partito comunista italiano. Italy-Politics and government-20th century
タイトル:[Russian children's stories pamphlets]
件名標目:Children's stories, Russian

また,米国以外の出版物についても,一括目録作業がおこなわれることがある。例えば,ラテン・アメリカ部では,メキシコ,中央アメリカ,パナマの人権,難民,婦人,環境,労働,政治の各団体からの小冊子を一括目録作業で処理している。

一括目録作業は,これらのカレントな資料群に加え,滞貨資料に対してもおこなわれる。最近の調査によれば,滞貨資料のなかでも,調査研究資料としての価値があると判断されたものはかなりの数にのぼる。これらの資料の利用を保証するための実行可能な技術としても,一括目録作業は認められたわけである。

例えば,19世紀中頃から第二次大戦後までの9000冊以上の日本の学校教科書は,時代,学校,学年,教科毎に分類され,20数件の書誌レコードにまとめられてオンライン検索が可能になっている。さらに,各冊単位へのアクセスのために,アジア部の閲覧室には書名カード目録が用意されている。

以上の例はすべて,MARCフォーマットとしては「B00KS」に該当するものだが,写本,写真など,他のフォーマットを用いる資料群,さらに今後は単一形態に留まらず,複合媒体資料についても,一括目録作業をおこなうべき事態が到来するであろう。

国立国会図書館について言えば,「日本全国書誌:小冊子の部」に掲載されるパンフレット類は,まだJAPAN/MARCに入力されていないが,現在簡略整理とされている資料群を含めて,目録作業の効率化と利用者の資料アクセス保証のために,一括目録作業が検討されてもよいかもしれない。

大川龍一(おおかわりゅういち)

Ref: Conway, Martha O'Hara. Collection-level cataloging at the Library of Congress : cataloging‘alternatives’for the Library's arrearages. LC Information Bulletin 50 (17), 340-341, 1991. 9. 9 Collection-level cataloging. Cataloging Service Bulletin (53) 10-15, 1991